香港から他国に拠点を移す企業が多く出ている

中国・習近平(シー・チンピン)政権に対する批判を続けてきた香港紙「蘋果日報(アップル・デイリー)」が、6月24日付の朝刊を最後に発行を停止し、廃刊した。国家安全維持法(国安法)違反容疑で創業者や主筆、編集幹部らが次々と逮捕されたうえに資産が凍結され、発行が継続できない状態に追い込まれたのである。

2021年6月24日未明、オフィス周辺に集まった人たちに配るため、印刷したばかりの最終版を手にするリンゴ日報(アップルデイリー)の記者。
写真=AFP/時事通信フォト
2021年6月24日未明、オフィス周辺に集まった人たちに配るため、印刷したばかりの最終版を手にするリンゴ日報(アップルデイリー)の記者。

これは言論の封殺だ。中国という国は世界第2位の経済大国に成長しても、一党独裁体制の過ちを反省することなく、民主主義の土台となる言論の自由を香港から奪い去った。自由な国際金融都市として大きく発展してきた香港市場も、国際社会の信頼を失い、後は衰退するのみである。すでに香港から他国に拠点を移す企業が多く出ている。

蘋果日報は1995年6月創刊で、発行部数は約10万部で香港第2位、ネット版の閲覧数は香港で最大だ。扇情的なイエロージャーナリズムと批判されたこともあったが、反中国政府・親民主派のスタンスが香港市民の自由と民主主義を求める意識と呼応して、読者を獲得してきた。

ちなみに「蘋果」は中国語でリンゴのことだが、創業者の黎智英れい ちえい氏=英名ジミー・ライ、今年4月に有罪判決を受けて服役中=によれば、新聞名はアダムとイブが食べたリンゴに由来する。アダムとイブがリンゴを口にしなかったら世界に善も悪もなく、ニュースもないという意味だという。

中国政府にとっての「政治」とは国民を弾圧すること

蘋果日報の廃刊は、一国二制度の下で認められてきた香港の言論の自由が、国安法という悪法によって崩れ去ったことを意味する。

だが、沙鴎一歩は「ペンは剣よりも強し」という諺を固く信じる。言論を封殺するような習近平政権は、やがて国際社会から見捨てられ、必ず崩壊する。

中国政府は天安門事件(1989年6月)以来、自由と民主主義を求めて立ち上がる知識人や学者、学生、市民を繰り返し弾圧してきた。習近平政権の傀儡に過ぎない香港政府は、自由のために抗議デモを続ける香港市民を力ずくで抑え込み、昨年6月には無期懲役を最高刑とする国安法を制定し、運動家などを次々と逮捕した。

中国政府にとって国民を弾圧することこそが、政治なのである。沙鴎一歩はそんな中国に生まれなくて本当に良かったと思う。

この7月1日、中国共産党は創設100周年を迎える。習近平政権はその祝賀ムードを盛り上げるために中国政府を批判する民主派の一掃に余念がない。中国では国家よりも党が上に位置する。このため習近平・国家主席は、1982年以来廃止されている「党主席」を狙っている。