「欧米の民主主義とは今後も決別する」と演説
中国共産党が7月1日、創設100年の祝賀式典を北京の天安門広場で開いた。習近平(シー・チンピン)党総書記(国家主席)は、式典に集まった7万人の党員を前にこう演説した。
「1921年7月の創設以来、共産党は欧米の勢力に打ち勝ち、中華民族の偉大なる復興を実現するため、政治制度の基盤を築き上げてきた」
「共産党の指導は中国社会主義の頂点であり、欧米の民主主義とは今後も決別する」
1921年の党創設当時の党員数は労働者を中心に50人ほどだった。それが100年で9500万人以上にまで膨れ上がった。しかも党員はホワイトカラーが多数を占め、中国社会は貧困から脱出することに成功した。それを考えると、中国共産党の実績は大きいかもしれない。
さらに習近平氏は、中国の一部と主張して軍事的な脅しを続ける台湾に対しては「完全な統一を実現することは党の歴史的任務だ」と強調し、暴力と言論の弾圧で民主派を排除した香港については「これからも民主運動を取り締まる国家安全維持法(国安法)の履行により長期的な繁栄と安定を維持する」と力説した。
いまの中国の繁栄は台湾や香港など多くの犠牲の上に成り立っている。中国共産党トップの座に君臨する習近平氏は言いたい放題である。
歴代最高指導者の中で習近平だけが、毛沢東と事実上同列
そんな習近平氏は自らの権力をさらに高めようと画策している。
来年の党大会では定年制のルールを廃し、トップの地位の続投を狙う。それだけではない。建国の指導者である毛沢東が就き、いまは廃止されている「党主席」の地位を復活させ、自ら就くことを狙っている。
それが証拠にこの日の習近平氏は、天安門広場に掲げられている毛沢東の肖像画と同じ灰色の人民服を着て登壇した。
また、北京市内にできた記念施設「中国共産党歴史展覧館」では、歴代最高指導者の中で習近平氏だけを毛沢東と事実上同列に扱って業績を展示している。
中国共産党は毛沢東による過度の権力集中が「文化大革命」の混乱をもたらした反省から、集団指導体制をとってきた。ところが、習近平氏は、自身を毛沢東と同一視し、終身支配を狙っている。
習近平氏は自分の欲望を果たすことしか念頭にない。そのために世界の平和と安定を顧みず、中国の繁栄を追い求める。共産党1党独裁のなかで国民が貧困から抜け出して経済的に豊かになれば、多くの国民が自分の前にひれ伏すと考えてきたからだ。まさしく歪んだ正義である。