あらゆる惨い行為が、正義の名のもとに行われてきた

習近平政権は民主主義そのものが「悪である」と確信している。いまの中国政府にとって民主主義を攻撃し、消滅させることこそが正義なのである。

どの戦争も正義のために他国民を殺害した。敵は悪で、味方は正義なのである。中世における異端者殺しも、反革命者への弾圧も、ナチス・ドイツによるユダヤ人の虐殺も、すべて正義の名のもとに行われてきた。どんな惨い行為も、それが正義の名のもとに行われると、国民は是認し歓喜する。

習近平氏は正義に普遍性がないことをよく理解しているのだろう。だからこそ、民主主義との決別を強調し、国民を鼓舞するのだ。習近平政権にとって中国の社会主義が善つまり正義で、日本や欧米の民主主義が悪なのである。

しかし、騙されてはならない。いまの国際社会のなかで、沙鴎一歩は世界の平和と安定を求めることこそが正義である、と固く信じる。その観点で習近平政権の正義は大きく歪んでいる。

「内政干渉」と言い放ち、基本的人権を踏みにじる

習近平政権は、軍事力を使って東シナ海や南シナ海を埋め立て人工の軍事要塞を築き、沖縄県の尖閣諸島周辺の海域では中国海警船が侵入を繰り返しては日本漁船を追い回している。国際社会のルールに背く行動であり、決して許されない。

台湾や香港だけでなく、ジェノサイド(集団殺害)が国際問題になっている新疆しんきょうウイグル自治区に対しても、絶対に譲ることのできない「核心的利益」、他国の口出しを認めない「内政干渉」と言い放ち、基本的人権を踏みにじる行為を続けている。さらに巨大経済圏構想の「一帯一路」に関連する国々を脅して支配下に置こうとしている。

7月2日付の朝日新聞の社説は「中国共産党 誰のための統治なのか」との見出しを付け、こう書き出す。

「長大な栄枯盛衰の中国史のなかでも、この100年は特筆すべき激動の時代だった」
「確かに、一党支配体制は富国強兵を実現した。しかし、その統治は真の意味で人びとの解放を成し遂げているか」
「中国共産党の言う『偉大な復興』は、足元に潜む危うさと裏腹であると認識すべきだろう」