「宣言」から「重点措置」にするのも五輪のため

9都道府県の「緊急事態宣言」が解除され、岡山県と広島県を除く東京など7都道府県では6月21日から「まん延防止等重点措置」に移行した。感染者の数が高い水準で推移し、医療提供体制が逼迫している沖縄は7月11日まで宣言が延長された。

森ビルが設置した新型コロナウイルスワクチンの職場接種会場を視察する菅義偉首相(左から2人目)
写真=時事通信フォト
森ビルが設置した新型コロナウイルスワクチンの職場接種会場を視察する菅義偉首相(左から2人目)=2021年6月21日、東京都港区

感染対策が「宣言」から「重点措置」に変わったところで、私たち国民に与える影響はほとんど変わらない。それなのに、なぜ政府は重点措置に移行させたのか。それは東京オリンピック・パラリンピックの開催を前に、海外からの目を気にしているからだ。

緊急事態宣言だと、海外から厳しいロックダウン(都市封鎖)と受け止められる恐れがある。東京五輪を少しでも開催しやすくするため、わざわざ今年2月に重点措置の制度を設けたのである。

「デルタ株」はワクチンの効果を落とす危険性も

重点措置の対象地域では、飲食店に午後8時までの営業時間の短縮を求め、アクリル板設置などの感染対策の徹底があれば、アルコール類の提供が午後7時まで認められる。

一方、大規模イベントの観客数は「5000人以下」に限られ、重点措置の解除後の1カ月間は「1万人以下」とする経過措置が設けられている。期限の7月11日にまん延防止等重点措置を解除した後、8月中旬までは「1万人以下」となる。これも五輪開催を見据えた設定だろう。あまりに露骨だ。

第4波となった3月下旬からの感染拡大は、イギリスで確認された変異ウイルス「アルファ株」の流行が引き金となり、全国の新規感染者はピーク時の5月上旬で7000人を超えた。重症者は1400人台に達し、昨冬の第3波を超え、全国各地で医療現場の混乱を招いた。

それにしても7月23日に東京五輪開催が迫るなかでの緊急事態宣言の解除である。今後、菅義偉政権は感染の再拡大を防ぐことができるのか。現在、都内では感染者数の下げ止まり状況にあり、「五輪の開催前後に感染が再拡大する危険がある」と警告する感染症対策の専門家は多い。さらにインドで確認された変異ウイルス「デルタ株」は、アルファ株よりも感染力が強く、免疫に影響してワクチンの効果を落とす危険性が指摘されており、ウイルスの置き換わりが懸念される。