大きな変異が起これば、いまのワクチンは効かなくなる
産経社説は菅首相の頼みの綱であるワクチンについて「幸い、ウイルスとの戦いの切り札となり得るワクチン接種をめぐっては、菅首相がリーダーシップを発揮し、順調に進んでいる。自衛隊による大規模接種に加え、職域接種も始まった」と言及し、こう主張する。
「さらなるスピードアップが可能なはずだ。自治体によってはワクチンを打ちたくても接種券が届いていない人が大勢いる。打ち手を確保できずに職域接種に手を挙げられない企業がある」
「さらなるスピードアップ」とは菅首相以上にワクチンに依存していないか。冷静に考えてほしい。あくまでもワクチンは人体にとって異物であり、今回の「mRNAワクチン」は人類にとって初めての試みだ。まだ予期せぬ副反応や数年後の影響の問題がすべて解決されたわけではない。スピードアップで無用な混乱も生じかねない。大きな変異が起これば、いまのワクチンはすべて効かなくなる。
2回接種後にしっかりした抗体ができるには1カ月ほどかかる
産経社説は書く。
「専門家による種々のシミュレーションでは、7月、あるいは8月にも感染の第5波が訪れる予測がある。だが、ワクチン接種の迅速化で感染や重症化を減らし、人流や行動の抑制で予測を外すことは可能なはずである」
専門家はワクチンの効果が表れる時期も計算に入れて第5波を予測している。ワクチンは3週間を間に挟んで2回接種し、その後しっかりした抗体(免疫)ができるまで1カ月ほどかかる。ましてや、集団免疫を獲得するには少なくとも人口の6割以上が2回の接種を終える必要がある。五輪開催の前後に第5波が出現するものと考えて対策を練っておくべきである。
最後に産経社説は「やがて世界からトップアスリートが東京に集結し、聖火台に灯がともる。五輪が東京の、日本の開催でよかったと思いたい、思われたい。そのための、菅首相の言葉が必要である」と訴えるが、五輪の開催に感情的になっていないだろうか。