キャリアを活かしたシニアの転職は、なぜ難しいのか。シニア層を長年取材しているジャーナリストの若月澪子さんは「時代のスピードが加速するのとは反対に、知力や体力は低下していく。その“反比例”の中で、収入や働き方や生き方を含めた自分の立ち位置を決めなくてはならないからだ」という――。

「SE不足」なのになぜ「シニアSE失業」か

人手不足が叫ばれる中で、とくに深刻と言われているのがSE(システムエンジニア)である。企業の間では「SE人材の獲得競争」が熾烈を極めており、一部には20代で年収1000万円を稼ぐプレイヤーがいるなどの話を耳にする。

しかし技術がハイスピードで進化する世界では、昨日までの技術が今日には古くなる。その流れは加速する一方で、技術者は生き残るためにリスキリング(学び直し)を迫られる。しかしアップデートを繰り返したところで、シニアになるまで生き残れるSEはまれのようだ。

取材をしていても、すでに業界を離れた「元SE」の中高年にはよく出会う。素人からすると「人手不足なのになぜ」と思うが、業界が求めるのはあくまで「先が長い」「投資する価値のある」、とにかく「若い」技術者のようだ。シニアSEは、そもそも頭数に入っていないのが実情なのだろう。

画面を見て困っているシニアビジネスマン
写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen
※写真はイメージです

「今のSE不足というのは、限られた年齢の人たちの話です。技術の進歩は速く、求められる人材は常に変化していくので、年が若いほど価値がある時代になっている」

こう話す山梨県在住のBさん(63歳)も、つい1年前まではSEの一人だった。しかし今は、地元の市役所で契約職員として事務の仕事をしている。

「コスト回収できる人」と企業が判断するライン

BさんはSEとして6つの会社を渡り歩いてきた。最後の会社で60歳定年を迎え、その後は同じ会社で給料3割減で1年契約の嘱託社員として働いたが、3年目は契約更新がなかった。

「できる限りSEを続けたかった。ただ同僚は20~40代前半までの人ばかり。60歳を過ぎた私は、社内で浮いた存在でした」

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今、法律では企業に対し「65歳まで希望者全員の就業確保」を義務付けている。しかし、定年以降はほとんどが非正規雇用の1年契約になり、途中で契約が打ち切られても違法ではない。つまり非正規ゾーンに入った途端に、法的な歯止めは弱くなる。

エンジニアに限らず、シニアに取材していると、65歳になるのを待たずに62歳ごろで再雇用を離脱した話をしばしば聞く。これは若手との世代間ギャップ、本人のやる気や体力以上に、企業側が「コスト回収できる人」と判断する限界ラインが、62歳ごろに訪れるからではないだろうか。

ここからリスキリングを施したところで、「使える」期間は長くない。中小企業なら尚更、そのコストを惜しむだろう。