怒りの声が上がった飛び込みW杯

市民の間では「東京五輪は中止せよ」の声が止まず、コロナの感染拡大は依然収まらない。そんな中、海外から選手を呼んで五輪最終予選とテスト大会を兼ねた水泳飛び込みのワールドカップ(W杯)が5月1日~6日、東京都内で実施された。

練習に臨む寺内健(右)、坂井丞組(ミキハウス)。坂井のへんとう炎のため、2日に行われる男子シンクロ板飛び込み予選を棄権した=2021年5月1日、東京アクアティクスセンター
写真=時事通信フォト
練習に臨む寺内健(右)、坂井丞組(ミキハウス)。坂井のへんとう炎のため、2日に行われる男子シンクロ板飛び込み予選を棄権した=2021年5月1日、東京アクアティクスセンター

選手らは厳しいコロナ対策の中で大会に臨んだが、宿舎から出られず缶詰め状態、食事は全食が弁当支給と、おいしい日本食を期待してやってきた選手たちからは「なんだこの食事は!」と失望や不満が続発。東京五輪が標榜してきた「おもてなし」を発揮するべきはずが、全て吹き飛んでしまった。

コロナ禍の日本国内で行われる「多数の外国人選手が出場する最終予選」として、五輪本番前の最初で最後の機会だったこのプレ大会。運営側のチカラが試される場面でいったいどんなことが内部で起こっていたのか。怒りの声さえも上がる中、おもてなしどころか運営側のやる気すらも感じられなかった状況を詳報する。

緊急事態宣言の中、約250人が入国

東京都に緊急事態宣言が発令され、小池百合子知事が他県在住者に「GWは東京に来ないで」と訴える中、海外の選手が同時期に「隔離免除で競技へ直行」という入国特例措置で東京入りし実施された、矛盾に満ちたこのイベント。日本政府がコロナ感染対策で外国人の入国を基本的に拒否しているにもかかわらず、46カ国の国と地域から225人の選手が参加した(主催者調べ)。

この大会をめぐっては、そもそも開催前から「ケチ」が付いていた。

主催者である国際水泳連盟(FINA)が、4月に予定されていた同大会を「日本政府による感染対策に不安あり」といった理由などで、一旦は「日本での競技会はムリだ」と一方的に中止を決定。しかし、プレ大会をなんとしても実施したい日本側が、FINAや国際オリンピック委員会(IOC)との話し合いを行い、日程を延期した上でようやく復活開催にこぎつけた経緯がある。

筆者は今回の飛び込みW杯実施に当たり、「入国時の水際対策」「宿泊施設での感染対策」「選手らへの供食状況」「会場での競技運営」の4つのポイントに注目した。