逮捕された香港の運動家は、臓器を抜かれる恐れもある

習近平政権は香港と同様に「絶対に譲れない核心的利益」とみなす台湾と新疆しんきょうウイグル自治地区を軍事的に弾圧している。日本の尖閣諸島(沖縄県)周辺海域では、中国海警船が侵入を繰り返しては日本の漁船を追い回す。東・南シナ海では巨大軍事力を背景に軍事要塞を次々と作る。中国の国際的脅威は増すばかりである。

いまの中国は「ならず者国家」と批判されても文句は言えないだろう。国際社会は中国に対して軍事的優位に立つアメリカを中心に包囲網を築き、中国に対して圧力を加えていくべきだ。

どうしても気になるのが、逮捕された香港の活動家たちの命である。国安法の最高刑が死刑ではなく無期懲役とはいえ、服役中に病死と偽って殺すことも可能だろう。

さらに中国では死刑囚に麻酔をかけて眠らせ、その体から心臓や肝臓などの臓器を摘出し、移植用の臓器として海外の患者に売り払うことが続いてきた。摘出された心臓はひとつ1億~2億円で闇取引されていたという。中国政府は2015年に、刑執行後に死刑囚の臓器を摘出する慣行を廃止するとしているが、実態はわからない。そもそもそうした慣行があったこと自体がおそろしい。

ジャーナリズムの原点は権力に屈しない反骨精神にある

6月25日の毎日新聞の社説は「りんご日報の廃刊 許されぬ香港の言論封殺」との見出しを立てて、その冒頭部分でこう訴える。

「24日付が最後の紙面となった。『別れの書』と題した社説は『報道の自由は暴政の犠牲となった』と憤りを込め、読者と香港を『永遠に愛する』と結んだ」
「1995年に創刊され、共産党批判からゴシップまでタブーを恐れない紙面作りで知られた。昨年6月の国安法施行後も民主派支援の論調を貫いた」

「党批判を恐れない」。そこに蘋果日報の素晴らしさの本質がある。ジャーナリズムの原点は、権力に屈することのない反骨精神だ。中国政府を恐れ、香港の新聞やテレビなどが次々と権力批判を中断するなかで唯一蘋果日報だけが批判を続けた。

2020年4月28日の香港のニューススタンド
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はたして日本のメディアはどうだろうか。日本の新聞社やテレビ局もそうあってほしい。とくに新聞の社説は、ときの政権の誤った政策をきちんと正す主張を展開し、首相や閣僚らをうならせてほしい。