退職勧奨を受けたものの固辞した50代事務機メーカーの事務職のケース

希望退職募集も応募する・しないは本人の自由だが、会社から退職勧奨を受けても固辞する場合、自分の意に反した会社への出向を命じられることもある。

以前、大手事務機メーカーの事務職のある50代の社員が退職勧奨を受けたものの固辞した。その結果、物流子会社に出向を命じられた。

子会社での仕事は事務作業ではなく、経験のない製品の運搬作業を命じられ、精神的・肉体的にも追い込まれた。

会社としては自ら辞めるようにわざと配置したふしがある。このケースでは、結果的に社員が裁判に訴え、出向は「会社の権利濫用で無効」と判断で復職することができたが、裁判まで持ち込む勇気がなければ泣き寝入りせざるをえないのが実態だ。

特定の社内派閥に属すことで、逆に飛ばされるリスクが高まる

ではこうした悲劇的な出向を回避するために、社内に派閥があれば上司に媚を売って特定の派閥に属することは身を守ることになるだろうか。ドラマ「半沢直樹」では一部の取締役や社員の中に、派閥に属することで出世が早まり、いざというときのリスク回避にも役立つ場面も描かれている。

日本のビジネスマンがひざまずいて詫びする
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確かに部長や役員に忠節を尽くせば、出世が早まることもあるかもしれない。しかし、逆にリスクも大きい。M&A(合併・買収)でライバル会社に吸収された製薬会社の人事部長はこう語る。

「合併によって大幅な役員の交代が実施された。将来の社長候補と目されていた役員が子会社に異動した結果、取り巻きの部長・課長たちも子会社に飛ばされ、次々と失脚していった。実質的に吸収した側の企業は合併後の人事の障害となる派閥を真っ先に狙い撃ちにする。合併に限らず、今の時代は業績不振に陥ったり、ビジネスモデルが変わったりすれば、たちまち派閥のトップの役員が外され、ぶら下がっていた幹部もどうなるかわからない時代だ。派閥に入ることは同時にリスクも抱えている」

こう語る人事部長はどの派閥にも属していなかったが、それでも合併後に降格された。

だが、与えられたミッションを全力で取り組み、その成果が認められて今の地位(人事部長)に返り咲いた。この部長は「定年まで生き延びていくために大事なことは、社内の生々しい人脈づくりよりも、利害を超えた社外の人脈をつくることだ。そのつきあいを通じて自分の能力レベルがどのくらいなのかを知ることができるし、社外の人脈を通じて仕事に活かすなど自分を磨くことが生き残るための賢い選択」とアドバイスする。