ドラマ「半沢直樹」(TBS系)が絶好調だ。人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「ドラマ内では失脚した社員は出世競争に敗れ、出向させられていますが、現実はさらに厳しい。コロナ不況で9月以降、出向・転籍、希望退職者募集などでリストラを始める企業が増えそうです」という――。
「半沢直樹どころじゃない」イマドキ企業の出向・左遷・社内派閥
ドラマ「半沢直樹」(TBS系、日曜夜9時)が高視聴率を維持している。
ドラマはメガバンクの陰湿な派閥争いに巻き込まれた、堺雅人演じる主人公・半沢直樹の出向からストーリーが始まる。ドラマの出向は出世競争に敗れた人、あるいは不祥事の責任をとらされた片道切符の左遷というイメージだが、確かに昔の銀行はライバルを蹴落とすための出向もあった。
大手銀行の元人事部長からこんな話を聞いたことがある。
「部長・役員レースになると、陰湿な手口を使って相手を蹴落とすための暗闘もある。たとえば、以前は上司と部下の良好な関係を築いていても、部下が自分の地位を脅かすような存在になると、平気で部下を追い落とすことも珍しくない。よく使われる手口が出向だ。上層部に『あの会社を再建できるのはA君しかいません』と上申し、銀行内から追い払う。あるいは、過去の懲戒記録を調べて、社外で酒に酔って他人とケンカし、警察沙汰になったことの噂を流して出世の芽をつぶし、出向させたこともあった」
まさにドラマを地でいくやり方だが、今の銀行は低金利下で生き残りに必死であり、内部で暗闘を繰り広げる余裕もなくなっている。
蹴落とす手段に使われる出向先の関連会社や取引先も経営的にゆとりがなくなり、特に無能な人間ほどやんわりと受け入れを拒否されるという話もしばしば耳にする。今では銀行も以前ほどの力を失っている。