コロナ禍で「会議はオンライン」という企業が増えた。ITツールに不慣れな人は肩身の狭い思いをすることもある。しかしジャーナリストの溝上憲文氏は「新しい仕組みに追いつけない、あるいは斜に構えて学ぼうとしない人は、コロナ禍の業績悪化にのみ込まれて今の居場所すら失ってしまう恐れもある」と忠告する——。
自宅での作業中、疲れて半分机にうつぶせになり目を閉じている男性
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「オイオイ、何やってるの」テレワークで小バカにされる中高年社員

コロナ禍の出社制限で出勤日の半分は在宅勤務という人も珍しくない。コロナ前は定時に全員そろって出社していたが、今は時差通勤で出社・退勤時間もバラバラ。職場の風景もすっかり変わった。

仕事をする上で大事な社員間のコミュニケーションや会議も対面からオンラインに変わった。通勤など移動時間や場所が限定されない便利なツールでもあるが、一方でうまく使いこなせない人も多く、いわゆるオンラインデバイドとも呼ぶべき問題も顕在化しはじめている。

広告業の人事部長がこう語る。

「その昔、パソコンが登場したときに中高年のオジサン世代がスキル習得に苦労した時期がありましたが、今年はコロナ禍で一気にオンライン元年になってしまいました。会議やミーティングで顔をそろえても操作がわからなくてついていけない人もいる。概して50代以上のオジサン世代に多い。若い世代やクリエーターなどは『オイ、オイ、何やっているの』という感覚ですが、オジサンにとっては必死なのです。実際に上から下まで全員が共通に使いこなせるようになるには2~3年かかると言われています」

オンライン会議で共有ファイルを見て議論できない

実際にどんなトラブルが発生しているのか。

よくあるのは会議中にオンライン上の共有ファイルを全員で見て議論しようとするのに、なかなかファイルを引き出せない。引き出してもうっかり削除してしまうケースもあるという。

また、会議での議論など進捗状況によって資料は随時変更する必要がある。これが慣れないオジサンにはハードルが高い。

「一部修正加筆されたファイルを上書き保存すれば大丈夫だか、ちゃんと更新していないので一体いつのファイルかわからなくなる人もいる。全員がオンライン上で同じファイルを見ながら議論し、それはいいね、となればそのたびに画面を修正し、最後に完成形を全員が見て保存する。そうすれば会議の効率も高まるが、その作業に手間取っている人がいると、議論が中断してしまう」(人事部長)