三菱自動車、ANA……コロナ禍の業績悪化で希望退職募集が相次いでいる。人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「リストラ対象は主に40代以上や管理職で、再就職活動に苦戦する人が多い」と話す。転職で失敗する元大企業社員に共通する5つの特徴とは――。
東京
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コロナ禍で活況の転職市場「大企業出身者」がひどく不人気な理由

コロナ禍の業績悪化による大手企業の希望退職募集が相次いでいる。最近では三菱自動車に続いて全日本空輸(ANA)も希望退職募集を実施することが報じられている。

その対象となるのは決まって40代以上や管理職だ。社員の中には募集に応募して再就職を決意する人もいるだろうし、あるいは募集しなくても、会社の先行きに不安を感じて転職を考える人もいるだろう。

もちろん昔と違い、40代・50代の求人ニーズは増えている。自分の専門性などキャリアに自信がある人は転職も可能だろう。しかし落とし穴もある。

大手人材紹介会社の部長は一番やってはいけないのは「会社を辞めた後に転職先を探すこと」だと指摘する。

「決して会社に辞表を出してから転職先を探さないこと。辞めた後の転職では年収が下がるケースがほとんどだ。辞めて仕事がない状態だと、相手企業に足元を見られて今までの年収より低い額を提示されることが多い。次の仕事を決めてから転職するのが年収を下げない秘訣だ」

とくに希望退職募集に応募した人は離職後に次の仕事を探す人が少なくない。希望退職募集に際してはオプションとして再就職支援会社のコンサルティングサービスを付けてくれる企業も多い。

前職を辞めて充電のつもりが転職先を探す意欲を失い“放電”期間に

しかし、それでもなかなか決まらない人を筆者も多く見てきた。

中には会社から割増退職金をもらったこともあり「今は景気が悪いのでしばらくは様子を見たい。その間に充電しますよ」と言った人もいた。3カ月後に職探しを始めたが、結局1年経っても決まることはなかった。

本人は充電のつもりでも、必死に転職先を探す意欲を失ってしまう“放電”期間にすぎなかったのだ。

転職は決して甘くない。新卒学生の就活と同じぐらいの必死さも求められる。しかもミドルの転職では「若い人と違い、何をしたいかではなく、何ができるか」(前出部長)という専門スキルも厳しく問われる。

また、専門スキルがどんなに高くても、それだけで転職できるわけではない。ミドル・シニアの転職を専門とする人材紹介会社の事業部長は「専門性やスキル以外では何と言っても人柄」だと言う。

「たとえどんな高いスキルや経験の持ち主でも、クライアント企業との間でうまくコミュニケーションが取れない人は決定的にダメだ。とくに大企業の出身者は中小企業に再就職する人が多いが『この人はちょっと上から目線の物言いをするな』と感じる人は、最初はよくても結局、長続きしないで辞めてしまったという例が多々ある」