「コロナのどさくさ紛れ」働き方改革に名を借りた賃金カット&リストラ
新型コロナウイルスの影響で9月中間決算が赤字ないしは減収減益に陥った企業も多い。そんな暗いニュースの中で、これまで遅々として進まなかった「働き方改革」がなぜか加速している。だが、この動きはビジネスパーソンが素直に喜べる内容とは言えない。
働き方改革の本来の趣旨は、労働時間の削減などワークライフバランスの確保や多様な働き方を可能にすることで個人の能力の最大化と生産性向上を実現することだ。
国は、働き方改革により「中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現する」(首相官邸Webサイト)という、いわば賃金の底上げを目指している。
ところが、今進んでいる働き方改革の中には、その趣旨とは逆行するものばかりだ。とりわけ「人件費削減目的」の改革が横行しているようだ。
下記は、そのおかしな働き方改革の典型例だ。
①ノー残業に名を借りた残業代カット
②週休3日制の導入
③副業容認企業の増加
④テレワーク推奨の裏で推進するオフィス費用のカット
⑤「ジョブ型」賃金制度導入に伴うリストラの実施
例えば残業代、会社の「固定費削減圧力」が増している
①から順番に解説していこう。
コロナ禍の業績悪化による残業代削減圧力が高まっている。コロナ前はノー残業を推進するために、残業しなくても従来の残業代に見合う一定の手当を支給する先進的な動きも見られたが、今では残業代削減が至上命題になっている。
業績悪化に陥ると固定費で最も大きい「残業代」「採用費」「広告宣伝費」「交際費」を削るのが常套手段となっているが、建設関連会社の人事部長は「すでに中途採用を中止し、定時終業を原則とし残業代の削減も進めている。大手も下半期から残業代の厳格化をはじめ採用費、広告宣伝費などの削減を行っている企業が増えている」と指摘する。
実際に所定外労働時間(残業時間)は今年4月に前年同月比マイナス30%に落ち込んで以来、徐々に回復しているものの9月もマイナス12%となっている(一般労働者、厚生労働省「毎月勤労統計調査」)。
もちろん残業が少なくなることはよいことだ。しかし、労働組合の連合のテレワーク調査(6月上旬)によると……。
「通常勤務よりも長時間労働になることがあった」と答えた人が51.5%。
「残業代の対象となる時間外・休日労働を行った」人は38.1%(そのうち「勤務先に申告しなかった」人が65.1%、申告したのに「勤務先に認められないことがあった」人が56.4%もいた)。
本来支払われるべき残業代を申告しない、あるいは支払わないのは会社の固定費削減圧力が増しているとも考えられる。