それまで隠れていた「社員の本質」がコロナ禍で浮き彫りになっている。人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「取材した人事部員によれば、実はストレス耐性が低かった社員、社内失業者的な社員がさらに劣化したケースがある一方、これまであまり戦力と考えていなかったのに突然頭角を現した社員もいる」という――。
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コロナ禍で意外な「社員の本質」があぶり出されている

新型コロナウイルスの感染拡大が長期化するなかで、職場ではさまざまな“不都合な真実”が顕在化している。

その節目は、緊急事態宣言だった。

解除されるまでの約2カ月間、多くの企業は出社制限による在宅勤務を余儀なくされた。5月末の解除以降、徐々に出社が始まったが、信じられない行動を取る社員もいた。

広告業の人事部長はこう語る。

「6月から週2~3日は在宅という『50%ルール』を目標に在宅勤務に移行することになりました。自粛明け初日は、待ってました、とばかりにほぼ全員一斉に出社してきたのです。ところが、退職届を出してきた社員が若干名いました。どうして? と聞くと『感染するのが怖くて出社したくない』というのです。さらに驚いたのは出社2日目に『うつ病で会社に来れません』と40歳の男性社員が医師の診断書を持ってきたのです。コロナ鬱とか在宅鬱といわれますが、在宅が長すぎたせいかもしれません。コロナ前は他の社員と変わらない普通の社員でしたが、実際は神経質でストレス耐性が弱かったのかもしれません」

ふだんの健康診断やストレスチェックではわからなくてもコロナ感染拡大という異常事態の長期化で豹変する社員もいるのだ。

メール・電話返信なし、ウェブ会議不参加「全然連絡取れない社員」

しかし表に出るだけまだましだ。在宅勤務中にどんな生活をしているのかわからない社員もいる。在宅勤務を推奨している教育・研修会社では出社日を週2日以内に抑制する指導しているが、平均的には週2~3日出社が多い。しかし、今でも週1日も出社しない社員もいるという。

勤務記録をデータでチェックしている同社の人事課長が、ちゃんと仕事をしているのか、と上司に問い合わせると驚くべき答えが返ってきた。

「彼とはこの2週間全然連絡が取れないのです。メールや電話をしても出ないし、ウェブ会議を招集しても参加しないので困っています」

人事課長はこう語る。

「さすがに上司が『何をしているかわかりません』と言ったときはカチンときました。仕事の割り振りや業務の内容までは口を出せませんが、『安否確認だけは怠らないように』と釘を刺しましたが。でもこんな社員は珍しくありません。もっと驚いたのは当社ではノートパソコンと携帯電話を社員に貸与していますが、パソコンを会社に置いたまま在宅勤務をしている社員もいます。同じ職場の社員は『あの人、パソコンを持って帰らないで家で何をしているんだろうね』と言う声も飛び交っています」