8.5%いる「社内失業者」が在宅勤務になって顕在化
これだけではない。人事課長が社員全員に事務連絡のメールを送ると、いつまで経っても返事を寄越さない社員がいた。催促するために電話をすると「あ、ゴメン。ちょっと待ってね。今パソコンの電源を切っているから」と友達に話すように言ったという。
「えっ、就業時間中なのにパソコンの電源を切っているのはどういうことだろうと思いました。出社時も電源を切ることはありませんし、パソコンを使わないでどんな仕事をしているんだろうと。こんな疑惑を抱く社員は結構います。人事部内でも議論になりますが、結局、そういう社員は出社しているときも仕事をするフリはしていてもあまり成果を残していなかった人が多い。それが在宅勤務中に顕在化したというのが結論です」
彼らは、コロナ前はどうしていたのかといえば、全員が定時に出社し、顔が見える状況で仕事をする中で、業務の成果を出せなくても「彼なりにがんばっている」と、どこかで見過ごされてきた。
あるいは、期限付きの重要な仕事は真面目で仕事ができる他の社員に任せられ、どうでもいい仕事しか与えられなかった社員が在宅勤務に入った途端、本当に仕事をしなくなった可能性もあると、この人事課長は睨んでいる。
社内失業者は8.5%いるという内閣府の調査があるが、在宅勤務になって顕在化したということだろう。
「結局、社員の1~2割が稼働しなくても会社が回ることを確信した」
倉庫会社の人事部長も「在宅勤務といっても社内メールを見ているだけの社員もいる半面、コロナ禍でも前年比5%の売り上げ増になった」と語り、こう話す。
「結局、社員の1~2割が稼働しなくても会社が回ることを確信しました。本当はそんなに人はいらないのではないかと話題に上ることはある。さすがに人を削る話にはなっていないが、業務の整理が進むことは間違いないでしょう」
一方、在宅勤務で管理職のマネジメント能力の欠如が浮き彫りになったと語る。
「今まで部下とのコミュニケーションや関係性が作れていなかった管理職でも何とかマネジメントをこなしていました。しかしオンラインになり、距離が遠くなったとたんマネジメントができないことが完全に顕在化し、職場のパフォーマンスが落ちています。改めてコーチングスキルやリモートマネジメントの研修をしていますが、そもそも管理職に不向きな社員を任用していたのが最大の問題です。今後は管理職の適性を厳しくチェックすることになるでしょう」