サラリーマンは絶滅危惧種

サラリーマンはもはや完全に「絶滅危惧種」となった。その理由は、日本の経済成長がほぼ止まったこと、人口の伸びが止まったこと、そしてなにより、少品種大量生産の時代が終わったことが挙げられる。

つまり、環境が変化したのである。

2019年5月、トヨタ自動車の豊田章男社長は記者会見で、「なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と述べた。時を同じくして日本経団連の中西宏明会長も「終身雇用を前提に企業運営、事業活動を考えることは限界がきている」と発言している。日本型雇用システムはもう維持できないと、経済界がついにさじを投げたのである。

トヨタというのは、かつて奥田碩元社長が「経営者よ、クビ切りするなら切腹せよ」という言葉を残したように、社員のリストラには否定的であり、日本型雇用システムの象徴ともいえる存在だった。

しかし、日本の基幹産業である自動車産業はいま、EV(電気自動車)や自動運転というテクノロジーによって「移動産業」へと移行する大変革期に直面している。その激変する環境に対応するため、トヨタはいま本気になって、人事システムや評価制度の見直しを行っているのだ。

「働かないおじさん」の正体

そして近ごろ、新聞紙面や雑誌などでよく目にするようになったのが、「働かないおじさん」や「妖精さん」といった、40~50代のサラリーマンを揶揄する言葉だ。

みなさんの会社でも探せば見つかるのではないだろうか。会社にはいるが、仕事をしているようには見えず、それでもそれなりの給料をもらっている存在が……。

ビジネスエンジェル
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日本型雇用システムにおいては、終身雇用や年功序列などの特徴から、若いころは多大な労働力を提供しながら給料は低く抑えられ、年齢が上がるにつれ給料が上がり、50歳前後になると、給料が生産性を追い抜いてしまうということが起きる。

つまり、働かないおじさんたちは若いころの会社への貸しをいま、取り返しているのであり、日本型の雇用システムの象徴といえる存在なのだ。

そんな彼らがクローズアップされていることと、トヨタなどが日本型雇用システムの刷新に手を付け始めたことは明らかにリンクしている。日本型雇用システムからの脱却──社会の流れははっきりとその方向に向かい始めた、ということである。