「黒字リストラ」の意味

働き方改革、副業容認、ワークライフバランス、同一労働同一賃金など、これらはすべて日本型雇用システムから脱却するために進められているものだ。リストラの中身にも、その兆候がはっきりと表れている。

東京商工リサーチのまとめによると、2019年の早期・希望退職によるリストラは6年ぶりに1万人を超えた。上場企業では富士通2850人、NEC3000人、ルネサスエレクトロニクス1500人、東芝1410人など、業績があまりよくない企業や業種が人数的には目立つ。

しかし注目すべきは、2018年度決算で過去最高益を出したキリンホールディングスをはじめ、アステラス製薬、カシオ計算機など、業績が非常に好調である企業までリストラに踏み切っている点だ。その募集の対象年齢も、多くの企業が足並みをそろえるように、45歳にまで下げてきている

新型コロナウイルス問題のために見えづらくなっているが、それ以前の企業業績は全体的には悪くなかった。景気回復の期間は戦後最長ともいわれた。こうした中でのリストラの増加であり、それも業績のいい会社までが、ターゲットを40代にまで下げてリストラに手を付け始めているのだ。

「40代強制定年」が当たり前になる

そもそも、これまで日本の労働者は守られ過ぎてきた。欧米の労働市場は、日本よりはるかに流動的である。一流企業は何年もかけて育てないとモノにならない新卒など採用しない。採用するのは他社で経験を積み、スキルを磨いてきた即戦力の人材だ。

年功序列の日本型雇用システムにおいて、企業の管理職ポストは限られており、40代というのは曲がり角であることは言うまでもない。いまの日本の企業には生産性に見合わない賃金を払う体力はない。すぐにでも日本型雇用システムから脱却しないと手遅れになるとの危機感から、昨今の「黒字リストラ」という状況が生まれた。

そして、日本型雇用システムを象徴する40~50代の「働かないおじさん」や「妖精さん」の処遇を変えることが、日本型雇用システムからの脱却につながる。論理的には必然として、彼らをターゲットとする「40代強制定年」が進んだ、というわけだ。

要は、これからは会社に食べさせてもらっている人は生き残れず、自分の力で食べていける人だけが生き残るようになる。そして、自分の力で食べていける人にとって、会社に所属するかしないかは二次的な意味しか持たないようになっていく