年収1000万円だった59歳男性が青ざめた理由
「今の生活がこれだけ厳しいのだから、これからの老後生活は、ますます厳しいものになるのでは……」。コロナ禍によって、多くの人がそう感じているのではないだろうか?
このような災難が降りかかる前、リタイア直前の人々の老後に対する考え方は以下のような感じだったと思う。
「長生きが当たり前になったから、公的年金だけでは家計は厳しいはず。ま、元気で働ける間は働くとするか。その収入で生活をまかなって、公的年金が受給できるようになれば、年金と預貯金を取り崩しながら、悠々自適とはいわないまでも、たまに旅行に行ったり、孫や子どもにお小遣いをあげたり。多少なりとも、ゆとりある生活ができれば満足だ」
こうした庶民のささやかな夢をかなえるのはもはや実現不可能なのか。ここに、コロナによって「老後の計画が狂ってしまった」という無職のAさん(59歳)がいる。
新型コロナ感染拡大でセカンドステージの就労のメドが立たない!
都内在住のAさんは、長年IT関連のシステム開発に従事してきた技術職である。今年3月に、長年勤務してきた会社を60歳直前で退職。本来であれば、しばらく休んで、今頃は新しい職場に転職しているはずだった。
それが、新型コロナウイルスの感染拡大により再就職のための就活もままならなくなり、4月7日に「緊急事態宣言」が発令されたことで、外出すらできなくなってしまった。
Aさんは、10年前に離婚。前妻との間にできた2人の子どもの養育費も数年前に終わり、これからは、本格的な老後生活に入るまで、自分一人が食べていけるだけの収入があればよいと考えていた。
「前職での年収は1000万円くらいでした。これまでのキャリアやスキルなら、高望みしなければ、すぐに再就職できるはずだと安易に考えていました。実際、すこし前に転職した同僚もそうでしたし、これまでと同じくらいの待遇で、再就職を打診されている企業もいくつかあったんですが、コロナの蔓延でそれどころではなくなったみたいで……」
話を進めていた企業も含め、再就職は「コロナが落ち着いたら改めて」という対応で白紙の状態になったという。Aさんとしては、想定外の災難で、セカンドステージでの働き先のメドがつかない状態になったことに困惑するしかなかった。