妻と大学生の長男と同居しながら、自宅兼事務所でWEB制作・デザインの仕事をしている男性(58歳)は貯金が80万円しかない。世帯月収は手取り97万円だが、17年後の75歳まで支払いの続くローン残債が計6500万円ある。本当に働き続けられるのか。相談に応じたファイナンシャルプランナーが出した結論とは——。
それぞれのデバイスでデザインのチェックをする2人
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手取り世帯月収97万円がたちまち「蒸発」してしまう58歳の生活

「老後資金がかなり少なくなってしまったんですけど、自分、長く働くつもりなので、大丈夫ですよね?」

ご夫婦でWEB制作・デザインの会社を経営しているFさん(58)。会社は順調で、同い年の妻と二人合わせ、毎月手取り97万円ほどの収入を得ています。しかし、驚くべきことに貯金はほぼありません。一般的に「貯金がないんです」というご相談の場合でも、実際は200万〜300万円は持っているケースが多いのですが、本当に100万円もないのです(80万円)。バブル世代の方らしいといえば、らしいのですが……。

聞けば、今まであまり貯金ということを意識したことがなく、「使う分だけ稼げばいいじゃん」と思ってきたそうです。企業に雇われているわけではないので、仕事は60歳以降も長く続けられる。だから生活は大丈夫だろうと思っていたそうですが、「やがて退職した時のことを考えると、急に不安になったんだよね」(Fさん)とのことです。

子供は2人います。長女(28)は就職して独立、長男(22)は専門学校から大学に入り直し、現在大学2年生です。長男は同居で、学費のほか、生活費、こづかいなどの面倒をみています。

業績好調で収入アップ、「節約よりも稼ぐ」ほうがよい

会社を設立したのは、今から10年前。それ以前は個人事業者で売上額は微々たるもの。収入から国民健康保険料、国民年金保険料を支払っていたこともあり、ほぼゆとりのない家計でした。

ところが、幸いにもその後、徐々に売り上げが伸び、10年前に個人事業から法人になり、社会保険適応事業所となりました。手取り額も増え、生活費にゆとりができたそうです。そして自宅兼事業所を建て、2人の従業員も雇い、現在のような状況になりました。

成長を果たしたこの10年間を質素に暮らしていれば、貯金が増えたのは確実です。しかし、収入が増えたことで、生活費もそれに比例して増えてしまいました。

お金について、次第に「節約よりも稼ぐ」ほうが良いと考えるように。その結果、「手取り97万円」もきれいさっぱり使い切る暮らしになってしまったのです。

家計状況を見ると、それがよくわかりました。