親から相続した都内のマンションに住む62歳の独身男性は、老後不安に悩んでいる。55歳の時、1200万円の退職金を手にしたが、「ずっとマジメに働いてきたんだから」と5年間で700万円分を浪費してしまった。今も唯一の癒やしである食費に月9万円超を使っている。家計相談を受けたファイナンシャルプランナーのアドバイスとは――。
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写真=iStock.com/Chachawal Prapai
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退職金1200万円を手にした途端、700万円浪費した62歳独身女性

「年金生活に入ったら、暮らしていけるかどうかが心配で」

心配そうな顔で家計相談に来たのは、継続雇用で働いている都内在住の会社員・田中則夫さん(62歳・独身)。現在、手取りで月約20万円の収入がありますが、家計は毎月赤字です。

年金だけに頼る暮らしに突入すると収入が今以上に減るので、貯金(現在680万円)を取り崩すことで何とかやっていけるのか試算してほしいといいます。結果は後ほど報告しますが、その前に、田中さんのキャリアを振り返ってみましょう。

約7年前、田中さんは55歳の時、大卒後に就職した企業で役職定年を迎えました。「今退職するのなら退職金が割り増しされる」と聞き、退職を決断しました。受け取った退職金は1200万円。それまでの貯金(当時300万円)と合わせ、資産は1500万円ほどになりました。

その後、すぐに今の会社に営業事務として再就職しました。当初の手取り月収は約32万円。比較的高待遇の給与を得ることができました。暮らしているマンションは相続を受けたものでローン負担はなく、管理費(月2万6000円)や固定資産税(年約13万円)を支払うだけ。今までずっと独身できたため、生活費もそう多くはなく(月26万5000円)、再就職先の収入は生活するのには十分な金額でした。

「それに、前職の退職金などの蓄え(計1500万円)もあるし……」

そんな気の緩みもあり、それまでずっと憧れていた高級時計やブランドバッグ、高級靴、バイクなどを立て続けに購入し、その他にも、旅行などで散財してしまったそうです。「長年、自分はマジメに働いてきたんだから、これくらいのぜいたくは許されるはず」。再就職してからの数年間で支出額はどんどん増えていきました。

そして、気が付いた時、退職金を含む貯金の残りは約800万円にまで減っていたのです。