コロナ禍で中学受験を断念する家庭が増えている
コロナ禍によって日本社会の先行きが見えにくくなった。これからの「子どもの教育」と「お金」の関係はどうなっていくだろうか。
日本経済や家計への影響が長引くようなら、子どもの教育や進路に対する親の考え方も変わってくる可能性がある。最近増えている家計相談の訴えのひとつに、「(聖域だった)教育費を削ろうか迷っている」というものがある。
「ウチは、子どもは『中学から私立に行かせなきゃ』と思っていました。でもコロナ禍で、目が覚めた感じです。共働きとはいえ、中高6年間で600万円かかる私立に行かせて大丈夫かと、夫も私も一気に不安になりました」(30代女性)
こうした意見が増える一方、これまで以上に子どもに十分な教育を受けさせてやりたいと考える親もいるだろう。なぜなら、先行き不透明だからこそ、むしろ堅実で安定した大企業や公務員などへの志向がより高まり、それに応じて、ある程度のブランド力のある学歴を希望する家庭が増えると考えるからだ。
「自分の老後」は後回しでも「教育費」にお金をかけたい親は6割以上
大学生以下の子どもがいる20歳以上の男女1000人を対象に行ったソニー生命保険の調査(※)では、「子どもの学力や学歴は、教育費にいくらかけるかによって決まると感じる」と考える人が7割近くにものぼっている。しかも、「老後の備えより子どもの教育費にお金を回したい」人が6割以上いた。
「子どもの学力や学歴は、お金次第」「自分たちの老後の備えよりも、子どもの教育費を優先させたい」と考える親が、多数を占めていることが読み取れる。
※「子どもの教育資金に関する調査2020」(2020年3月27日発表)
昨年、「老後資金2000万円不足問題」が話題となり、老後の備えの重要性が周知されたにもかかわらず、自分たちの将来を犠牲にしてもいいという親の価値観には驚くばかりだ。どうやら、彼らの熱量の高さは、教育を取り巻く環境の変化も関係していると思われる。
「大学共通テスト」の導入や、私立大学の定員厳格化によって大学入試が難化した結果、中学受験をして、難関大合格実績の高い中高一貫校を狙う家庭が少なくない。いずれ受験勉強で苦労するのであれば、多少教育にお金をかけても、早いうちに、子どもにベストな教育環境に置いてやりたいという親は少なくないのだ。