「家庭の教育費」2000年4万1145円→2018年3万4542円と16%減少
ただ、すべての親が糸目をつけない、というわけではない。長らく続いた平成不況などによって、平均所得は1995年550万円から2016年442万円へと、20年間で20%、110万円近くも減少した(厚生労働省「国民生活基礎調査」所得の中央値)。
多少収入が増えたとしても、高齢社会の進展や少子化によって、税金や社会保険料の負担が増え、いわゆる手取り収入である「可処分所得」は減るばかり。よって、聖域であった教育費にも手をつけなければならない家庭も出てくる。
総務省「家計調査年報」によると、教育費負担が重くなりがちの40代後半の勤労世帯の家計支出のうち教育費について、2000年は4万1145円に対して、2018年は3万4542円と16%も減少しているのだ。
大学生の収入に占める「アルバイト」の割合は急増
こうした中、親にとってさらなる痛手となったのは、大学の学費だ。国立だけでなく、私立大学の学費は、入学金・授業料に加えて設備費などもあり、全体的に上昇傾向である。
学費が上がって、すべてを親が捻出できないとなれば、子ども自身が負担せざるを得ない。大学生の収入源は、おもに「お小遣い(下宿生は仕送り)」「奨学金」「アルバイト」の3本柱だ。近年、このうち「アルバイト」が占める割合が急増している。
全国の国公立および私立大学の学部学生を対象にした生活実態調査(※2)によると、収入に占める「アルバイト」の割合は、
2010年:自宅生50.1%(2万9690円)、下宿生17.8%(2万1900円)
2019年:自宅生61.1%(4万1230円)、下宿生25.9%(3万3600円)
と、割合・金額ともに急増している。70年以降のデータと比較しても、最高値を更新しているという。
同じく収入源の一つである奨学金については、やや減少傾向にあるものの、大学学部(昼間部)で48.9%、大学院修士課程で51.8%、大学院博士課程で56.9%と、半数近くかそれ以上が何らかの奨学金を利用している(※3)。
公的な「給付型」奨学金は創設されているものの、住民税非課税世帯など、あくまでも低所得の家庭向きの制度で、ほとんどが返還(返済)の必要な「貸与型」である。
世帯収入や教育費が減っている中、上記の「逆風」に加え、今回のコロナ禍が追い打ちをかけた形だ。奨学金やアルバイトで、何とか学費や生活費をまかなっていた学生が困窮しているのは、報道にされている通りだろう。
それぞれ独自の支援金を給付する大学がある中、ようやく国も、5月19日に最大20万円の「学生支援緊急給付金」を給付すると発表したが、大学中退を検討している学生が2割もいるとする調査結果もある(※)。学生に対する経済的支援は急務だろう。
※2:「第55回学生生活実態調査」国大学生活協同組合連合会(2020年2月28日)
※3:「学生生活調査」(2016年度)日本学生支援機構
※4:「新型コロナ感染拡大の学生生活への影響調査(全国119の大学、短大、専門学校などの学生514人が回答)」高等教育無償化プロジェクトFREE(4月29日)