老後資金の積み立てと子供の教育費の捻出。どちらを優先するべきなのか。ファイナンシャルプランナーの横山光昭さんは「『子供の希望をかなえたい』と教育費で無理をすると、結局、老後資金を作れず、最終的に子供に迷惑をかけることになりかねない。無理をしてはいけません」という——。

飲食店経営の父子家庭の親が悩む「わが子の教育費と自分の老後資金」

「娘を大学に通わせながら、自分の老後資金を貯めることはできるでしょうか」

高校2年の娘(16)を連れて家計相談に来たのは、都内在住の自営業・Kさん(55)。子供が小さい時に離婚し、飲食店を営みながら男手ひとつで育ててきたと言います。

店の経営は常連さんもいて順調ですが、収支は月によってまちまちです。ただ、これまで少しずつ貯めたお金に加え、不倫をした元妻から離婚時に受け取った慰謝料兼養育費の350万円をそのまま取ってあります。これらを合わせた蓄えの総額は530万円です。

「いらっしやいませ 営業中」と書かれた看板
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娘は、そろそろ進路を真剣に考えるタイミングで、国公立大学を第一志望にしています。学費の高い私立大は選択肢に入れていません。日々奮闘している父を見ているだけに「浪人はできない」と考えていますが、国公立大に落ちてしまうと滑り止めの私立大学に行く可能性もあります。その際は、入学金や学費の一部を、奨学金制度を申請して工面しなければならないかもしれません。返済時に父親に経済的な支援をお願いすることになり、負担をかけてしまうのではないかというのが娘の心配事です。

Kさんは娘のためなら、それも仕方がないと思う反面、自分の老後資金を今後うまく貯めていけるのかを不安に思っています。

国公立大学の費用は、1年目は入学金・授業料が年80万~90万円。2年目からは授業料約54万円。私立大の場合は毎年100万円以上となります。今のKさんの収入と貯蓄で大学へ進学させようと思うと、やはり国公立大学が精いっぱいでしょうし、受かった大学が自宅から通えなければ、もっとお金が必要になります。