「出会い系」2.0のゆるさ
春は出会いの季節。別れの季節。そして引っ越しの季節。引っ越しをしなくても、不用品が一年で最も排出される季節。
そして家から出てきた不用品はこの「SDGsなご時世」、見知らぬ人の元へ旅立つこともある。
「私は赤いスポーツカーで向かいます。70代のおじいちゃんです」
この日、埼玉県在住のTさん(77歳)は自宅近くのコンビニの駐車場で、「白いニット帽の女性」を待っていた。サングラスをかけたTさんは、クリーム色のウインドブレーカーに、スポーツブランドのキャップ帽をかぶった、ごく普通のシニア男性である。
Tさんは自慢の赤いホンダのスポーツカーの運転席に座り、周囲をうかがう。「一体どんな人が来るのだろう」。Tさんがその女性と会うのは、今日が初めてだ。
待ち合わせの12時半よりも少し早く、30代くらいの白いニット帽の女性が現れた。Tさんのスポーツカーに近づいてくる。
「こんにちは。どうもありがとうございます」
Tさんは運転席から降りて車のトランクを開け、「ブツ」を女性に見せた。Tさんと女性をつないだのは、不用品の譲渡アプリ「ジモティー」だ。
Tさんは自宅に不要な中古テレビがあったので、これを「500円で売ろう」とジモティーに掲載したところ、この女性がメッセージをくれたのである。
おじいちゃんがスポーツカーで“配達”
女性はここまで電車と徒歩で来たという。19インチの薄型テレビだが、女性に徒歩で持ち帰らせるのは気が引ける。聞けば彼女は車で20分くらいのところに住んでいる。Tさんはサングラスを額に持ち上げながら言った。
「しょうがないな、車で家まで送ってあげるよ」
女性は遠慮しながらも「じゃあ、お言葉に甘えて」と、Tさんのスポーツカーの後部座席に滑り込んだ。知らない男性の車に平気で同乗するのは、自分が「おじいちゃん」だからなのだろうとTさんは考える。
ジモティーは不要品を譲渡するプラットフォームとして、2011年にリリースされた。不用になった衣類やおもちゃ、家具や家電などを自由に投稿でき、地域密着型SNSとして活用されるサービスだ。
2021年より自治体とも連携し、アプリを使用しなくても不用品を持ち込むことができる地域拠点「ジモティースポット」を、名古屋市、川崎市、静岡市など全国に32店舗(2026年1月時点)展開している。
アプリの登録者数は若者から高齢者までおよそ1500万人。掲載料や手数料はかからず、登録は偽名でOK、年齢、性別も非公開にできる。メルカリやヤフオクとの違いは、郵送ではなく直接会って取引する点だ。
ただ、見知らぬ者同士の取引には、どこか「危うさ」が伴う。Tさんもこれまでに約束をすっぽかされたり、不良品をつかまされたりしたこともある。しかし、たいていは気持ちのいい出会いと別れで終わる。

