オンラインスキルが乏しく、部下に適切な指示が出せない残念上司
建設関連業の人事部長は管理職のオンラインスキルが業務にも影響していると語る。
「コロナ前から課長と部下がよくコミュニケーションをとって連携し、報・連・相がしっかりできている部署は、オンラインになっても支障なくコミュニケーションがとれ、業務遂行もうまくいっています。一方、社員のなかには上司や先輩と余計なことは話さないタイプの人もいる。そうした社員は在宅勤務になるとメールはできても、電話をするのはハードルが高くなる。本来なら管理職が率先してオンラインでコミュニケーションを取るべきですが、それをやろうとしない。その結果、作業に余計に時間がかかり、チームの連携にも支障を来しているケースがあるようです」
部下の仕事ぶりを把握できなければ人事評価も難しくなる。建設関連業の人事部長は「在宅勤務だと放っておくと、本当に働いているのかどうかもわかりません。行動が見えないとプロセス評価ができず、成果物でしか評価できない。結果的に行動プロセス評価はどうしても全員が同じ評価になってしまい、より成果の比重が高まってしまう」と指摘する。
本来であれば、在宅勤務中の仕事の基本は、課で取り組むタスクの一覧をつくり、タスクの目的とゴールを共有し、タスクの目標が部員一人ひとりの目標にひも付いていることだ。
いつまでに何をやるかというタスクの目標の進捗状況を事前に記録し、週1回の会議で部員同士や上司が確認し合い、悩みや困っていることがあれば上司や仲間と相談し合えるルールを作っておくことも必要だ。
業務の見える化で働かないオジサンは消える一方、メンタル不調者続出
しかし、スキル不足でそれをやりきれてない社員や管理職も少なくない。
その一方で、オンラインシステムや業務システムのIT化は日々進化している。前出の広告業では情報システム部門が主導し、業務効率の見直しの一環として「タスクの見える化」のシステム開発に着手している。
具体的には、管理職と部下が話し合って業務を週単位・1日単位で個人がやるべきタスクがシステムに落とし込まれる。そして進捗状況がシステムで日々確認され、全員が同じ画面で共有する仕組みだ。
「全員の仕事を“見える化”することで、在宅でも日々の仕事ぶりやプロセスもわかりますし、日々の成果物も明確になる。問題点があればチャットで上司が指示することも可能です。この仕組みが導入されると、これまで何となくごまかしていた作業もバレますし、働かないおじさんも一目瞭然となります。今まで見えなかった残業管理もやりやすくなるかもしれません」(人事部長)
ただし、人事部長はこのシステムが導入に一抹の不安があると言う。
「情報システム部門の役員は、この仕組みによって生産性が上がるという理屈を言いますが、実態としては社員の仕事ぶりを常に監視するのと同じです。これまで以上にWebやデータを駆使するツールの発揮が求められるし、それができないダメな人は真っ先に追い出されてしまう。もちろん効率化は進むでしょうが、社員にとってはきつい。息抜きもなくなり、個人的にはメンタル不調者が出てくるのではないかと心配しています」
オフィスに同じ時間に全員が集まって仕事をするという環境がコロナ禍で一変し、ITシステムを駆使したワークスタイルに大きく変わろうとしている。
そのスタイルには一長一短があるものの、こうした新しい仕組みに追いつけない、あるいは斜に構えて学ぼうとしない。そうした人は、コロナ禍の業績悪化にのみ込まれて今の居場所すら失ってしまう恐れもある。