東京・目黒のミシュラン一つ星イタリアン「ラッセ」のオーナーシェフ・村山太一氏は、2017年からサイゼリヤ五反田西口店でアルバイトをしている。なぜトップシェフはチェーン店でバイトをしているのか。村山氏は「サイゼリヤは同じイタリアンで世界一。経営の手法や生産性を高める仕組みを知って、現状を打破しようと思った。その成果は想像以上だった」という——。

※本稿は、村山太一『なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか? 偏差値37のバカが見つけた必勝法』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

シェフが仕上げのソースをかけている
写真=iStock.com/KuzminSemen
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ぜんぶサイゼリヤに教えてもらっちゃおう

世の中には、僕のようなバカと、秀才がいます。もし、僕が秀才だったら、サイゼリヤじゃなくて二ツ星か三ツ星レストランにバイトに行ったかもしれません。一流から学ぶほうが早く星を増やせそうだし、周りからも「星を獲ってるのに修業に行くなんて、すごいですね」と尊敬されそうです。

なのに、僕が選んだのは街のファミレスの代表格のサイゼリヤ。星持ちの秀才シェフだったら、プライドがジャマしてこんな選択は普通できません。

サイゼリヤを選んだのは、本当にシンプルな理由です。今、僕のレストランは生産性という課題を抱えている。サイゼリヤは、すでにこの課題をクリアしている。しかも同じイタリアンで世界一だ。ぜんぶサイゼリヤに教えてもらおう!

自分でウンウン思い悩んで、チマチマ経営改善するなんて、時間のムダでしかありません。すでにうまくいっているところに飛び込んでいくのが、手っ取り早いのは明らかです。

堂々とショートカットしてしまいましょう。というわけで、僕はアルバイトとしてサイゼリヤに飛び込みました。

僕の店はチェーン店ではないけど、結局、チェーン店の経営の手法や生産性を高める仕組みを知らないことには、現状を打破できないと思いました。いつの間にか「ミシュラン思考」になっていたのを、リセットしなければならなかったのです。