銀座の歓楽街では、新型コロナウイルスのクラスターが発生。さらに、都の休業要請により多くのクラブが営業を自粛している。週末の夜でさえも人影は見当たらず、「夜の社交場」はその機能を失ってしまった。このままでは歴史ある文壇バーも閉店を余儀なくされる――。しかし、どうしても閉められない理由がそれぞれのママたちにはある。
観光客、ビジネスマン、買い物客……普段は昼夜を問わずにぎわっている銀座も、人影がまばらに。
写真=iStock.com/Stossi mammot
観光客、ビジネスマン、買い物客……普段は昼夜を問わずにぎわっている銀座も、人影がまばらに。

松本人志さん、銀座の女というのはそんなに恵まれているのですか?

2月下旬あたりから、銀座の街も新型コロナの影響が深刻になり、連日キャンセル続きで「ザボン」もついに休業宣言を致しました。4月に入ってからは街もガラガラ。そんな銀座を見てしまうと、悲しいだけではなく苦しい気持ちでいっぱいです。

老舗文壇バー「ザボン」の水口素子ママ(撮影=市来朋久)
老舗文壇バー「ザボン」の水口素子ママ(撮影=市来朋久)

テレビのワイドショーではダウンタウンの松本人志さんが、水商売の人たちの休業補償について、「ホステスさんが休んだからといって、我々の税金では、俺は払いたくない」と発言されました。世間では私たちというのはそんなにお金を持っていると思われているのでしょうか? たしかに稼いでいらっしゃる高級クラブもありますが、銀座はそういった店がすべてではありません。不況に悩まされながらも、これまで歯を食いしばって頑張ってきたんです。

正直に言いますと、私は毎月のように通帳を開いては、店の経営状況に悩んでおります。社会不況、出版不況でお客様は減っても、家賃と固定費はまとまって消えてゆく。支払いが回らず、自分の貯蓄を切り崩すこともしばしばです。3月はほとんど営業もしていないのに、大きな維持費だけが出ていきました。「手遅れになる前に店を閉めた方がいいのではないか」といった声を、常連の先生方から頂くこともあります。しかし、私にはどうしても簡単に店を閉めることなどできないのです。