人はなぜ不倫をするのか。脳科学者の中野信子氏は、「不倫は子孫を残すための本能的な行為だ。不倫は悪いことだという価値観は、人類の長い歴史から見ると後付けにすぎない」という——。
※本稿は、中野信子『空気を読む脳』(講談社+α新書)の一部を抜粋、見出しなど再編集したものです。
「懲らしめなければ」という心理
著名人の不倫が立て続けにニュースになり、規模は違うけれどそのつど「不倫バッシング」が起こります。あたかも誰かの不倫が発覚するのを常に多くの人が望んでおり、ひとたび不倫が報じられればみなが待っていましたとばかりにその人物をバッシングする……。
肉食魚のいる水槽の中に肉片を落とすと一瞬でその周りに肉食魚が群がってきますが、ほとんど似た構図のようにさえ見えてきます。
不倫の是非はさておき、自分とまったく関係のない人をバッシングするのは悪いことではないのでしょうか?
そもそも、あなたのごく身近に不倫を経験した人物が……いや、ほかならぬあなた自身も経験があるのでは?
なぜ人は不倫をするのでしょうか?
そして、なぜそれをバッシングすることが、エンターテインメント化してしまうのでしょうか?
不倫という言葉に過剰に反応し、発覚した人物を積極的にバッシングしようとする人は、「他人の不幸の上に自分の幸せを築く行為だから」「子どものことを考えるべき」「オレも(あるいは、私だって)、本当はパートナー以外の人との関係を持ちたいのにあいつだけいい思いをしてお咎めなしとは許せない」「社会の規範に反する行為を見逃すべきではない」と、それぞれの「正義」を盾に不倫バッシングを正当なものとして認識しています。