機能はほとんど同じなのに、高価な「ブランド物」が好まれるのはなぜか。脳科学者の中野信子氏は、「ブランド物を持つことは、すでに一定の社会経済的地位を手に入れているというサインだ。他者から『社会的パートナーとしての価値が高い』と認識され、より多くの投資を受けられる」という——。

※本稿は、中野信子『空気を読む脳』(講談社+α新書)の一部を抜粋、見出しなど再編集したものです。

スタイリッシュな新郎がウイスキーの入ったグラスを手にしている
写真=iStock.com/Yana Tkachenko
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ブランドのロゴが「独裁者ゲーム」に与える影響

「独裁者ゲーム」という、利他性の程度を定量的に検討できるということで、心理実験などでよく使われる課題があります。

分配者と受領者の二者で行われ、分配者が掛け金の配分率を決定し、受領者はその決定に従って受け取るだけという単純なルールです。

この課題では、受領者は配分率の決定に対して何かをすることも発言することもできません。独裁者ゲームでは、分配者は掛け金を独占するのが最も合理的な選択です。ですが、多くの場合、受領者に対して2割以上の配分比を決定することがわかっています。

被験者のブランドへの反応を調べるために、この独裁者ゲームをやってもらいます。

20枚の1ドル紙幣を持たせた被験者が、見知らぬ相手に対して一体何枚渡すのかを観察するのですが、この実験は相手がブランドのロゴなどが何もついていないセーターを着ている場合と、ブランドのロゴつきセーターを着ている場合とで、渡す枚数がどう変化するのか、という点がポイントです。

さて、ブランドのロゴの有無により、独裁者ゲームの結果はどう変わったのでしょうか?

ロゴつきの場合は、ロゴなしのときに比べて、実に25%も多い金額が、相手に与えられたのです。