人は「損したくない」と思う生き物だ。だが、その気持ちに任せていると「バカ」になってしまう。精神科医の和田秀樹氏は「先の参院選も、そうした“現状維持バイアス”が影響したのではないか。失敗や損を恐れる心理が日本中に蔓延すると、閉塞感が高まるとともに、思考停止のバカ化が進む」と指摘する——。
なぜ「損をしたくない」性根が世の中をダメにするのか
「れいわ新選組」や「NHKから国民を守る党」が議席を獲得し、政党要件を満たすほどの得票を得たことが大きな話題になった、7月下旬の参議院選挙。ただ、そうした新しい流れはあったものの、おおむね予想通り与党の勝利に終わった。
今回を含め最近の選挙における与党の勝利は、与党が積極的に支持されているというより、野党が頼りないからだという分析がされることが多い。
自民党に投票する人の心理は、「確かに、自民党には不祥事が多いし、森友・加計問題、年金問題での安倍首相の説明には納得のいかないところがある。でも、頼りない野党に政権をわたすくらいなら、あるいは、暗黒の民主党時代に戻るくらいなら、自民党に政権を担ってほしい」というようなものだと解説される。
そうした感覚はなんとなく理解できる。だが、参議院選挙は原則的に政権選択選挙でなく、中間選挙の位置づけが強い。要するに「政権交代するのは不安だけれど、今の与党のやり方に納得していませんよという人が、安心して野党に入れてもいい選挙」ということになる。