2019年10月、旭化成名誉フェローの吉野彰氏がノーベル化学賞を受賞した。ここ数年、京都大学の吉野氏や名古屋大学の天野浩氏など地方国立大学からノーベル賞学者が出ているが、東京大学出身者は意外に少なく、さらに国内最難関の東大理Ⅲ(医学部)は1人もいない。精神科医の和田秀樹氏は「これは日本の大学全体が極めて閉鎖的で、真に自由な研究ができない土壌であることを示している」という——。
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なぜ国内最難関の東大理Ⅲからノーベル賞が1人も出ないのか

10月に旭化成名誉フェローである吉野彰氏がノーベル化学賞受賞に決まったことは、2019年を代表するグッドニュースだろう。

修士で就職した企業内研究者がノーベル賞を受賞したことは、多くの企業内研究者の励みになるという声が大きい。私も同じ日本人として大変誇らしい。

いっぽうで気になる点も出てきた。

吉野氏は京都大学出身だ。ここ数年、この京都大学や名古屋大学など地方国立大学出身の学者がノーベル賞を受賞する傾向がある。ところが、東京大学出身者のノーベル賞受賞は少なく、またわが国において入学時の偏差値が最高とされる東大理科Ⅲ類の出身者が過去に1人もノーベル賞をとっていないのはどういうことか。“偏差値秀才”はノーベル賞を取れない、などという言説も時に耳に入ってくる。

そこで今回は、「受験勉強は“偏差値”を上昇させるが、ノーベル賞を受賞するような発想を阻害するのか(賢い子をバカにするのか)」を考察してみたい。