ダメだとわかっていても、性犯罪をしてしまう人がいる。精神科医の和田秀樹氏は「どんなに頭のいい人であっても、過労や睡眠不足、過度なストレスなどにより脳が誤作動を起こすことがある。そうなると理性では止められない」という――。
なぜ、30代男性は人前で女の子の教え子に抱き着いたのか
本来賢い人がなんらかの要因で突如バカになってしまうケースを精神科医の視点で分析している本連載だが、最近、私のクリニックにそうした患者が2人立て続けにやってきた。医師には守秘義務があるので、内容を一部改変して紹介することをご了承いただきたい。
ケース1は、繁盛している教育産業の経営者の30代男性である。
高学歴で、ある教育関連の企業に勤務していたが、数年前に独立。生徒も大勢ついてきて、またたくまに複数の教室を展開する教育産業のオーナーになった。ところが、この男性はある日、こともあろうに大勢の生徒がいる前である女性の教え子に抱きついてしまった。場合によっては強制わいせつ行為で逮捕されてもおかしくないが、平身低頭で教え子とその親に謝罪してことなきを得た。その後、この男性は自分の父親に付き添われて私のクリニックにやってきた。
診察時に本人に聞くと、「これまでにそういう既往はないが、この手の性的異常行為は常習性があると聞いたことがあり、またやってしまうのではないか不安です」と答えた。
ケース2は、現役の40代男性医師である。
数年前に駅で盗撮をやって、スマホを奥さんに取り上げられた過去がある。現在、スマホは持っていない。今回は、本人は酔っていてよく覚えていないが、電車で痴漢をして被害女性に駅員に突き出された。この男性も、やはり常習性が不安になり、家族に連れられての来院となった。
ケース1、2とも、まさに「賢い人がバカなことをした」事案であるが、果たして本人たちが心配するように常習性=依存性の可能性があるだろうか。