北方領土問題で「戦争」に言及し、日本維新の会を除名された丸山穂高衆院議員は、5月24日、体調不良を理由に議院運営委員会の聴取を欠席した。提出した診断書には「2カ月の休養が必要」と記されていたという。精神科医の和田秀樹氏は「過去のトラブルから考えるとアルコール依存の可能性がある。進行性で自然治癒はしないため、一刻も早く専門医の診断を受けるべきだ」という――。
報道陣の取材に応じる丸山穂高衆院議員=2019年5月20日、国会内(写真=時事通信フォト)

丸山氏が議員活動を休養して即刻治すべき進行性の病気とは

前回の記事「『突発性バカ』になる東大出身者の共通点」では、冒頭で3人の東大卒エリートが発した「暴言」に関して書いた。

3人とは、元衆議院議員の豊田真由子氏、兵庫県明石市長の泉房穂氏、そして、今、渦中にある衆議院議員の丸山穂高氏である。3人とも舌禍による自業自得と言えるが、5月11日、北方領土へのビザなし交流に参加中、「戦争で島を取り返すことに賛成か、反対か」などと発言した丸山氏と、他2人の暴言とは決定的な違いがある。

それは、酒を飲んでの暴言だったということだ。丸山氏の暴言に関しては多くのメディアが取り上げたが、その背景にある「アルコール」を深く掘り下げた報道は少なかった。

ここで、丸山氏は酒を飲んだ上での暴言だから許される、と言いたいわけではない。私の見立てでは、丸山氏には、単なる酒好き、酒癖が悪いといった範疇を超えたアルコール依存という診断をつけざるをえない。彼が今、議員活動を休養しているのは適応障害と医師から診断されたからとの指摘もあるが、それ以前に治すべき病気があるのだ。

あの暴言を撤回・謝罪する様子を見るに、泥酔していなければあのような失言はしなかっただろうと考えられる。また、答弁などで失言が許されない元キャリア官僚という経歴を考えても、飲酒していない時間帯はマトモな人であったのだと思われる。その政治信条の是非はともかく。

アルコールに「節度」を破壊する作用がある

アルコールが人間の抑制を解き、判断を狂わせ、知的能力を低下させることは誰もが知るところだ。飲酒運転の厳罰化もその流れによるものだろう。

その後の報道で、丸山議員は、北方領土へのビザなし交流中に「おっぱいをもみたい」「女を買いたい」などという破廉恥な発言もしていたことも明らかになった。

社会的地位の高い人たちのセクハラ事件も、酒の席のものが多い。

アルコールが賢い人をバカにする危険な薬物であることは疑いがない。いっぽうで、アルコールは少量であれば、覚醒度を上げ、脳の働きをよくすることも知られている。栄養ドリンクでごく少量のアルコールが成分になってきたのもこのためだ。

日本の場合は、酒席で接待したり、商談したりことは珍しくない。節度をもった飲み方をすることで親愛度を高めるのは非難されるどころか、歓迎されることでさえあることだ。

問題は、アルコールそのものに、その節度を破壊する作用があることだ。その結果が依存症である。