どう考えても自己に不利益な選択をする理解不能な相手を前にしたとき、その相手を「不合理な人間」と決め付けるのは簡単だ。しかし、真に優秀な交渉者はそうすべきでないことを知っている。

先日、私の教えている企業幹部対象の交渉講座で価値の創造と効果的な交渉のための戦略について議論していたとき、1人の受講生が手を挙げてこう言った。「こうした戦略は理屈に従う人間を相手にしているときはいいが、私が相手にするのは、すこぶる不合理な人たちだ。不合理な相手とはいったいどうすれば交渉できるのか」。