いまどきのフラットな組織では、「命令」ははやらない。しかしながら、「協働」の時代、人を思うように動かすのは至難の業だ。ストレートにものを言っても通じない相手を従わせるための奥の手とは。
人を管理することはかつてほど簡単ではなくなっている。企業はフラット化し、「命令」よりも「協働」で働くようになった。また、ネットワーク化された組織の登場により、新しい形の協働が必要になっている。さらに、グローバル化によって、文化的に多様な相手と仕事をする場合、人を動かすためのわれわれ[アメリカ人]の従来のアプローチ、つまり、力強く率直な物言いをするというやり方は、必ずしも最善の策ではない。
人を動かすための直接的な方法がうまくいかないときは、間接的な手法のほうがよい成果をもたらすことがある。ジュディス・ティングリーは自著『The Power of Indirect Influence』(2001年)で、「間接的に人を動かそうとする企ては、リーダーの側では意図したものだが、対象者には意図していないもののように映る」と説明している。本稿では、直接的な手法に代わる6つの方法を紹介する。
(1)遠まわしに伝える
西洋では、直接的なコミュニケーションのとり方を好む傾向があるが、他の文化圏では、仕事においてまったく別のアプローチをとる。ティングリーは、サウジアラビアでは、間接的なアプローチがいかに重要であるかを示す例を紹介している。官庁から情報をもらう必要があるときは、そこにふらりと立ち寄って、茶飲み話をしながら1~2時間ぶらぶらする。そのうちに、職員の1人が何か用かと尋ねてくれる。その時点で、今思い出したかのように自分の用件を述べる。するとそれは迅速に対処してもらえるのである。
それとなく他人を動かせる人がいると、われわれはそれを「あの人は愛嬌があるから」で片づけてしまいがちだが、実際は、用件をいったん脇に置いて、時間をかけて相手の心をほぐした成果であることが多い。