(2)聞くことにもっと力を入れよう

相手にこちらの考え方を受け入れさせようとするとき、われわれは往々にして、説明や説得に時間をかけすぎる。

人は、相手が時間をかけて自分の話を聞いてくれ、自分の懸念を理解してくれたと感じたら、相手の主張を受け入れることにさほど抵抗を示さないものだ。スティーブン・コヴィーは、ベストセラーとなった自著『7つの習慣──成功には原則があった』(1996年)で、人間の生存欲求に次ぐ最大の欲求は、理解され、肯定され、認められることだと述べている。「共感しながら聞くというのは、相手の世界(frame of reference) に入り込むことだ。あなたは相手の世界から外の世界を見るわけで、相手と同じように世界をとらえ、相手のパラダイムを理解し、相手の感じ方を理解するのである」と、コヴィーは説明している。

(3)自分を好きになってもらう

人間は自分の好きな人に対しては、嫌いな人に対してよりも「イエス」と言う確率が高いことが、さまざまな研究から明らかにされている。では、自分の好感度を上げるにはどうすればよいのだろう。見た目は自分ではどうしようもない。だが、他の面ではできることがある。なかでも重要なのは類似点を強調することだ。

われわれは自分と似通った人間、自分と共通の経歴、関心、意見、趣味、服装の人間を好きになる傾向がある。また、自分に好感を持っている人間には好感を持つ。

似たもの同士という感覚を高めるためには、相手のコミュニケーションのスタイル(言語的、非言語的双方の)を真似ることが有効だ。ティングリーはこの技法を「真似て、合わせる(modeling and matching)」と呼ぶ。

友人関係や、共通の知り合いがいる、といったことが大きな力を持つことがあるように、社会的絆も人を動かす強力な手段である。ロバート・チャルディーニは自著『「説得」の心理学──人を動かす6つの原則』(02年)で、タッパーウエアのパーティの力を取り上げて、「製品の購入を決定づけるうえで、社会的絆はその製品に対する好き嫌いの2倍の力を持つように思われる」と述べている。