成長にはイノベーションが重要な手段であることは誰もが認めるところだ。しかし、多くの企業はこれを偶然に任せてしまっている。イノベーションを持続可能で反復可能なものにするためにはどうすべきか。

多くの企業は、誰かが製品やサービスのアイデアを偶然思いつくのを待って、それをイノベーションといっている。しかし企業がこれまで以上に多くのアイデアを生み出し、競争相手が追いつく前にそれを売り物になる製品やサービスに変えることを求められている時代、こんな手法はもう手ぬるい。イノベーションを生み出す持続可能で反復可能な方法が必要なのだ。

よりよい製品やサービスをより迅速に、より効果的に発売する4つのステップから成る方法を紹介しよう。

 

【ステップ1】アイデアを生み出す

「わが社にはアイデアはたくさんある。課題は評価と選定だ」と、クライアントはよく口にする。多くの企業がアイデアの数と多様さに圧倒されているが、それはスタートの時点で焦点の絞り方を間違えているためだ。大都市の電話帳を使って電話セールスをやっても効果がないように、行き当たりばったりのアイデアがいくらたくさんあっても、それはイノベーションの優れた土台にはならない。成功するイノベーションの第一歩はよりよいアイデアであって、より多くのアイデアではないのだ。

多くの企業がアイデアを生み出すためにブレーンストーミングを使っている。ブレーンストーミングを成功させるためには、無関係のアイデアを排除する一方で、大化けする可能性がある破天荒なアイデアを包含する程度の間口を確保することが大切だ。

例を挙げて説明しよう。バージニア州にある世界最大のビデオ字幕制作会社、ナショナル・キャプショニング・インスティテュート(NCI)は、全米の90人以上の字幕制作者に自動的に作業を割り当てるリアルタイム・スケジューリング(RTS)システムを開発することにした。NCIはマネジャー、技術専門家、字幕制作者に作業を割り当てる社員を集めて、ブレーンストーミングを開いた。参加者には事前に、ブレーンストーミングのルール、思考を刺激する22の質問(「スポーツの延長戦をどのように自動処理するか」等)、およびいくつかの基本要件(「字幕制作者の技能レベル」等)を記した詳しい準備資料が渡された。具体的で、それでいて細かすぎないこの資料は、参加者に特定の解決策を押しつけることなく、優れたアイデアを生み出せるだけの情報を与えた。

参加者はまず104のアイデアを出した。それをランクづけと投票によって15のアイデアに絞り込み、設計チームのためにそれらに優先順位をつけた。これによって設計チームは、最も重要な要件を理解し、技術設計段階で、より詳しい情報が必要な場合は誰に聞けばよいかを知ることができた。

もうひとつの効果的なアプローチは、いわゆるトレンドの最前線にいて、自分たちが認識しているニーズに解決策を生み出している「リードユーザー」を見つけて育てることだ。例えばエリック・フォン・ヒッペルがリードユーザーに関する著書『民主化するイノベーションの時代』で指摘しているように、マウンテンバイクは1970年代初め、愛好者たちがスペシャライズド・バイスクル・コンポーネンツ社(カリフォルニア州)の各種バイク・自転車部品を使って自分独自の自転車を組み立て始めたことから生まれた。スペシャライズド社は、この種の自転車にもっと大きな需要があることを察知して、マウンテンバイクの製造・販売を始めたのである。2000年現在、マウンテンバイクは特殊自転車市場の60%以上を占め、70年代後半の販売台数ゼロから大きく成長している。

リードユーザーを見つけるには、ユーザーの大会に出かけたり、オンライン・コミュニティを築いて、観察したりしてみることだ。