人材募集のコマーシャルで「辛くて厳しい仕事」と打ち出して大成功した例がある。現在の消費者は、ハートウオーミングな虚像よりも「真実」を広告に求めるようになった。

アイボリー社の石鹸は、125年以上にわたって、家庭に「good, clean fun(心地よい清潔な喜び)」を届けてきた。シアーズ、クラフト、トロピカーナといったほかの由緒あるブランドとともに、アイボリーは優しさと明るさに満ち溢れた暮らしのビジョンを何十年も提示し続けてきたのである。しかしそのビジョンは単純で甘ったるく、人々を引きつける魅力をすぐに失ってしまうものでもあった。

ロンドンに本社を置くマーケティング・サービス会社WPPが行っているグローバルな調査、ブランドZでは、アイボリーやシアーズのような、かつて偉大だったブランドを「消えつつあるスター・ブランド」に分類している。これらのブランドは、かつて愛されるブランドになるうえで最大の推進力となった、「イメージに基づく強み」を失っているのである。

 

「きれいごと」ではなく「リアリティ」に反応

今日の消費者は、広告でかつては効果的だったつくりもののイメージを信用しなくなっている。残念ながら多くのブランドマネジャーがそれを理解していない。リアリティが重視されるようになったテレビの世界において、彼らは依然として「完璧な暮らし」のイメージをつくり上げ、それを売ることを続けている。

欠点が逆に大きな魅力の源になる場合があるということを、ブランドマネジャーたちは往々にして理解していないのだ。これは人々が製品の欠点に魅力を感じるということではない。そうではなくて、完璧すぎると思われるものを疑いの目で見るようになっているということである。

強力なブランドになるためには「本物らしさ」が必要なのであり、それはブランドの負の部分、つまりあまり好ましくない特性に見出すことができる。それは、通常、マーケット・リサーチ会社が「ネガティブ・エクイティ」と呼び、ブランドマネジャーたちが必死に隠そうとするものだ。