化学調味料いっぱいのスープをどう売るか
それぞれの商品に特有の「負の部分」を理解した少数のブランドは、大きな成功をおさめている。
私は数年前、優しさに溢れる母親と笑顔の子どもの広告に一貫して頼ってきた典型的なブランドのひとつ、リプトンの「カップ・ア・スープ」をリポジショニングするプロジェクトに手を貸した。
われわれは「1970年代は終わったのだ」という真実を受け入れるところからスタートした。今日では、まともな親ならこれほど化学調味料が多くて栄養分の少ない食べ物を家庭での夕食の一品として出すことはまずない。そこでわれわれは、「カップ・ア・スープ」をオフィスでの軽食として、午後遅く一息入れるときのスニッカーズやコークに代わるものとして売り込むことにした。
このブランドのネガティブな特性に、新しい、より役に立つ文脈を見つけることで、この広告を打ったすべての月に売り上げを伸ばし、20%の価格引き上げにもかかわらず累積で60%の売り上げ増を達成したのである。
パスタソースのトップブランドのひとつ、ラグーのマーケティング・チームに協力したときも、同様の経験をした。ラグーはプレーゴと、どちらのソースがより濃厚かをめぐって長年、激しい戦いを繰り広げていた。われわれはラグーの負の部分を受け入れることによって、その戦いに終止符を打ったわけだ。
ラグーはプレーゴほど濃厚でもなく、ボリュームもなかったが、それは強みに変えられる点だった。たっぷりの量のソースは大人にはよいかもしれないが、一般的な10歳の子どもにとってはそうではない。
われわれは、ラグーはたっぷり量があると消費者に信じてもらおうとするのではなく、ラグーの本当の姿、つまり「子どもが大好きなラグー」という点を大きく前面に打ち出した。この戦略によって、10年続いていた売り上げの減少を増加に転じさせることに成功したのである。