(4)相手を笑わせよう

ユーモアは人々の警戒心を解く働きをする。それは最大の武器であり、人々をわれわれの味方にしてくれる。笑っているときはネガティブな気持ちになりにくいものだし、自分を笑わせてくれる相手は嫌いになりにくい。

ユーモアは人を動かすきわめて効果的な手段になる。ユーモアのある人は話し手を、リラックスさせて、近づきやすく、場を仕切る力があるように見える。ユーモアは、聞き手のくつろぎと解放感を高め、それがひいては変化や新しいアイデアや他人の意向を受け入れる姿勢を高めるのである。ティングリーは『Eating Roses: Bites of Living Humor』(98年)の著者、エリー・マレクの次のような言葉を引用している。「人は直接言われたら拒絶する言葉でも、ユーモアとともに言われると受け入れる」。

ユーモアには抵抗を和らげ、協力を促す絆を生み出す力があるが、使い方には注意が必要だ。内輪のジョークや文化的な隠喩は、部外者に不快感を抱かせることがある。

(5)たとえ話や隠喩を使う

「優れたマネジャーはたとえ話を使って、相手に特定の視点を与え、共通の意義や目的を生み出し、共同体意識を芽生えさせる」と、ティングリーは言う。たとえ話をすることは人を間接的に動かすための強力な手段になるのだ。

隠喩にも似たような作用がある。隠喩が周囲の人間にどのような効果を及ぼすかを示す例として、ティングリーはある電子機器メーカーのCEO、ダンの事例を紹介している。

品質を維持するために、ダンはスーパーバイザーたちに各シフトの初めに品質チェックリストを確認するよう義務づけていたが、守っている者は少なかった。そこでダンは一案を講じた。ベテラン・パイロットでもある彼は、スーパーバイザーたちを自家用ジェットでの遊覧飛行に招待したのである。スーパーバイザーたちは大喜びしたが、それは、「今回は離陸前にいつものフライト・チェックリストを確認しないつもりだ」と、ダンが言い添えるまでのことだった。スーパーバイザーたちはそのメッセージを肝に銘じて受け取り、その後、チェックリスト確認の遵守率は向上した。