5000億ドルという数字も、新たな視点で「分解」しながら日常レベル水準までもっていくとイメージがわきやすい。私たちは普段、スーパーでいくらぐらい使っているだろうか。仮に1週間に約2000円として、月に約8000円、年間約10万円消費しているとしよう。わかりやすく1ドル=110円とすると、5000億ドル=55兆円だ。年間1人10万円使う場合、お客が何人いたら55兆円になるか。「55兆円÷10万円=5.5億人」である。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/tadamichi)

ここまでくると、「米国の人口は約3億人だから、全人口の2倍近い人がウォルマートで買い物をしているのだな」とか、「日本の人口は約1億2000万人だから、その4倍くらいの人が利用している計算になるのか」などと考えることができる。そして、5000億ドルという数字が身近に感じられるようになってくる。

つまり、数があまりに大きいと圧倒されてしまいがちだが、それを身近な数字で「分解」しながら解釈し直し、そして新たなストーリーに「統合」しながら理解することが重要なのだ。

ビジネスシーンで、営業先の企業の年間売上高が3億円だと知ったとする。「こんな小さな会社なのに3億円も売り上げているのか、すごいな」で終わってしまってはいけない。月商にすると2500万円だから、その会社が1つ数万円の商品を扱っているとして平均価格を3万円と仮定したとき、月間の販売個数は「2500万÷3万=約800個」だと推測できる。ビジネスパーソンにとってこうしたデータセンスは大切なスキルだと私は考えている。

データセンスを身に付けるには、目の前に数字の持つ意味を常に考えることが大切だ。漠然と数字を見るのではなく、一歩とどまって先の分解と統合を行う。そういう訓練の積み重ねで、数字に対する感性は磨かれていくのだ。

堀口智之
和から代表取締役
山形大学理学部物理学科卒業。2010年。大人のための数学教室「和(なごみ)」を創業。月間600人を超える社会人が学ぶ。著書に『「データセンス」の磨き方』がある。
(構成=田之上 信 写真=iStock.com)
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