オナラの成分が半分になるとニオイも半減するか?
カレー専門店などでは好みの辛さを選べることがある。通常の辛さの2倍、5倍、10倍……。このとき、唐辛子などの辛み成分を2倍、5倍、10倍と増やしているわけではない。辛み成分の量と私たちが実際に食べて感じる辛さは単純に比例しないのだ。
これは音の感じ方も同じ。最も小さな音のエネルギーを1とし、音を2倍、3倍に大きくして聞きたい場合、音のエネルギーを2倍、3倍にすればいいわけではない。
逆もしかりだ。びろうな話で恐縮だが、部屋にオナラのニオイを充満させたとしよう。窓を開けてオナラの成分を半分に減らせば、ニオイも半減するかというとそうはならない。ほとんど変わらずくさいと感じる。
では、カレーの辛さを2倍にするにはどのくらい辛み成分を加えればよいのか。オナラのニオイを半減させるためには、どれだけオナラの成分を減らせばいいのか。
こうした味覚や聴覚、嗅覚など人間の感覚は、一見、主観的なもののように思われるが、実はそうではない。これらの感覚は、きちんと計算できる。
「ウェーバー・フェヒナーの法則」がそれだ。ドイツの生理学者・解剖学者エルンスト・ウェーバーと、その弟子である物理学者・心理学者グスタフ・フェヒナーの師弟による合作で、1860年に発表された。
この法則は図にある数式で表される。人の感じる感覚の強さが「P」で、重さ・音の大きさ・におい成分の量などそのときの刺激の強さが「I」、感覚の強さが0になる刺激の固定の強さが「I0」、そして辛さなどの個々の刺激が固有に持っている刺激の度合いである定数を「K」としている。ちなみに「e」は前回ご紹介した「ネイピア数」である