「親友」は何歳からでも作れるのか。43歳のお笑い芸人・髭男爵の山田ルイ53世さんは、「自分の才能やキャパシティに見合わないことを、いつまでも夢見て目指していたらしんどい。40歳を過ぎたら『親友ができない』などと悩まないほうがいい」と話す。同い年の社会学者・田中俊之さんとの「中年男再生」対談をお届けしよう――。

※本稿は、田中俊之・山田ルイ53世『中年男ルネッサンス』(イースト新書)の第2章「僕らの歳で友達っている? 人間関係とコミュニケーション論」を再編集したものです。

「このまま誰とも釣りに行かずに死ぬのか」

【田中】40代男性の友達付き合いやコミュニケーションについて考えていきたいと思います。というのも、結婚して子どもができてからというもの、仕事と家庭の往復でいっぱいいっぱいで、友達付き合いや趣味の時間を真っ先に減らしてしまう中年男性は多いんです。僕自身もそうなんですよ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi)

【山田】僕はもともと社交性がない人間で、普段は何も気にしていないのですが、たまに夜中、「俺、友達おらへんな……」と絶望して落ち込みます(笑)。それでも結婚する前は、後輩とお酒飲んだり、ご飯食べたり、温泉行ったりしていたのに、結婚して子どもが生まれてから、それも一切なくなった。このままさらに歳を取ったときに、「俺、誰と飲むのかな」とふと考えてしまうんです。

【田中】それは、かなり多くの男性が共感できる悩みじゃないでしょうか。

【山田】「この先、俺はどうするんだろう……」という不安が、不意に襲ってくるんですよ。俺の人生、このまま誰とも釣りに行かず、BBQやキャンプもしないで死ぬのかなって(笑)。

【田中】「釣りに行かない」というのは、「釣りに誘ってくれるような友達がいない」という問題と同義ですよね。仕事一筋に生きて、そこでの付き合いしかしてこなかった結果、定年後に友達と呼べる人が誰もいない、という状態に男性は陥りがちなんです。

おじさんには“新しい友達”ができない

【山田】芸人というより僕の場合はですが、売れるまでは基本ホームレスみたいなもので、精神的にも金銭的にも余裕がない。なんとか芸で飯が食えるようになるまでは、最低限のお金を稼いで、後はもうお笑いに集中しなきゃと思ってたので。実際は、そこまでストイックにはなれませんでしたが(笑)。

売れたら売れたで忙しいし、仕事が減ったら再ブレイクしなきゃと必死になる。だから、積み上げてきた趣味とか何もないんですよ。仕事だけしてきた結果、その後何にもないって、寂しいですよね。

【田中】それはまさに、芸人さんに限らず、男性全般が抱えている問題だと思います。若い頃は、仕事で成功するべきだ、というルートしか男性には示されない。それで失敗したならまだしも、男爵のように努力して成功した人ですら、おじさんになったら寂しくて絶望する日があるって、ハメられた感がありますよね(笑)。じゃあ、どういうルートを選べばよかったの? って。

【山田】ほんまやなあ。

【田中】それに、中年男性には「新しい友達ができない」という問題もあります。友達といっても、せいぜいが高校や大学の同級生とたまに会う程度で、仕事関係で知り合った人と新たに友達になるというハードルは高いですしね。