「政治は結果がすべて」と豪語してきた安倍首相

強固な保守層に支えられて長期政権を築いてきた安倍晋三首相だが、ここにきて首相の「支持基盤」が大きく揺さぶられている。

外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案、いわゆる「移民法案」は国民の雇用や所得が失われるなどと保守派に不評で、日露首脳会談のゴールに設定され始めた北方領土の「二島先行返還」論にも大きな失望が広がっている。

保守派からは「憲法改正は安倍氏以外に実現できない」と期待する声も聞こえるが、頼みの綱である憲法改正も「すでに首相は諦めている」との見方が出ている。「政治は結果がすべて」と豪語してきた安倍首相は任期の2021年9月までに「結果」を出すことができるのか。

「安倍首相は政権延命を図っているだけ」。(時事通信フォト=写真)

いわゆる「モリ・カケ」問題で支持率が急落しても下支えしてきた保守層に動揺が走ったのは「移民法案」だった。外国人労働者が大量に日本に押し寄せ、「永住権」を獲得することを懸念した保守派からは「日本の伝統や文化が破壊される」「国民の雇用や所得が外国人に奪われる」などと不満の声があがる。

19年4月導入を目指す安倍首相は「いわゆる移民政策はとらない」と繰り返すが、首相に近い保守系メディアすらも「極めて近い仕組みと言わざるを得ない」「拙速に進めては禍根を残す」(産経新聞)と懐疑的だ。

「二島だけの返還」でいいなら歴代の首相もできていた

安倍首相は「日本を、取り戻す」をキャッチコピーに政権奪還を果たし、緊密な日米関係のもとに「対中・対露包囲網」を敷いてきたが、最近では日中通貨交換協定の再開や中国人ビザの緩和など「親中派」と見紛うほどの対中政策に舵を切ったかと思えば、対ロシア関係では先の首脳会談で今後3年以内の平和条約締結を目指すことで合意。北方領土交渉はこれまでの原則である「四島一括返還」ではなく、「二島先行返還」への転換になるとみられている。

さすがに自民党ベテラン議員も「もし、従来の政府方針の『四島一括返還』から転換すると言ったら、真っ先に反対していたのが安倍首相だったはず。まさか安倍首相が率先して修正する時代が来るとは思わなかった。そもそも『二島だけの返還』でいいなら歴代の首相もできていた」と呆れる。