日本には「セキュリティ」のプロがいない
欧米諸国から危険地帯へ赴く人々は、常にこのセキュリティを第一に考えている。例えば、南スーダンの紛争地に食糧や衣料品などの物資を供給するNGO「オペレーション・ライフライン・スーダン」は、「keep always staff alive(常にスタッフを生きて帰す)」を活動の目的よりも先に掲げ、毎日、軍出身のセキュリティのプロを交えた安全対策会議を開いている。
だが、日本には常に危険に晒される状況に対処できるようなセキュリティのプロがいない。日本のフリージャーナリストは、一回の取材に最大で数百万円の費用をようやく工面して、現地の「情報通」との人脈を築いているが、海外メディアと異なり危険地帯の情報が共有・蓄積される土壌がない。
冒頭の発言に戻るが、そういう意味で安田君は、セキュリティ対策をとったのか、人脈/ネットワークを構築できたのか、金は十分だったのか、そこに彼は自分で責任をとる必要がある。
今回の事件を教訓として、日本のメディア各社は連携し「セキュリティ」を強化するための情報ネットワークをつくるべきだと私は考える。
(構成=梁 観児 撮影=橘 厚樹 写真=時事通信フォト、iStock.com)