シリアで武装勢力に拘束されていたジャーナリスト安田純平さんが無事解放された。帰国後の記者会見で関係者や日本政府に謝意を表したことで、ひとまず安田さんへの批判は収まった。今後は本質的な議論を始めなければならない。そのポイントは何か。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(11月6日配信)より、抜粋記事をお届けします――。

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記者会見でまず謝罪した安田さんの対応は合格点

今回の安田さんは、危機管理対応としては非常にうまくやったと思う。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/takasuu)

11月2日の記者会見。3年にもわたる拘束が事実であれば、解放後たった10日しかたっていない中での記者会見は非常にスピーディーだった。国民の知る権利に応えるために政府の制止を振り切ってまでシリアに入ったという持論との一貫性を持たせて、解放後も国民の知る権利にできる限り応えようとする姿勢は十分に伝わってきた。

そして最も重要な記者会見の冒頭。

周囲に迷惑をかけてしまったこと、日本政府を身代金交渉の当事者にさせてしまったことについては申し訳ないと謝罪し、日本政府関係者が動いてくれたことについてはしっかりと感謝の意を示した。そして深々と頭を下げた。これまでの姿勢を大きく変えた。

このちょっとした謝罪と感謝の態度振る舞いが、以後の安田さんの立場を決定付けたと思う。ここで、これまでと同じ突っ張った態度振る舞いであったら、安田さん批判はどこまでも根深く続いていたと思う。

今回の安田さんの謝罪と感謝の意の表明によって、多くの日本国民がこれまで感じていた安田さんに対する癇はひとまず収まったと思う。そうであれば、次のステージとして、危険地域における取材のあり方、方法、対策など今後に向けた冷静な議論が展開されると思うし、それを期待する。安田さんを批判するにしても、それは後ろ向きな人格攻撃ではなく、今後のジャーナリストのあり方を考える上での前向きな批判にしなければならない。

政治家をはじめとするプライドの高い人たちは、どうしても自分の行動を正当化するのに必死になってしまう。そしてその正当化が目的化し、そのために支離滅裂な言い訳を展開し、ボロボロの評価に陥っていくというのが、何度も他人の同じ失敗を見聞きしているくせにプライドの高い人たちが陥ってしまうテッパンの失敗パターンだ。だが安田さんは、この失敗パターンに陥らなかった。

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