――アフリカは今、最後のビジネスフロンティアとして世界中の注目を集めている。同時にソマリアなどでは紛争が起き、危険と隣り合わせの状況だ。私たち日本人は、どうすればこのチャンスをモノにできるのか。日本のメディアが引きあげてしまったソマリアで取材を続ける最後のジャーナリスト・大津司郎さんが語る。
私が最初にアフリカに行ったのは、1970年のこと。大学3年生のときにアフリカで農業をはじめようと思い、友人と2人、船で1カ月もかけて渡りました。サハラ砂漠周辺で干ばつが起きたときにはNGOを立ち上げて救援活動を行い、青年海外協力隊でタンザニアに滞在したこともあります。それでスワヒリ語を話せるようになり、はじめはコーディネーターとしてテレビ制作に携わっていました。ジャーナリストとしての活動は、釈放されたネルソン・マンデラ氏にインタビューを行ったのがきっかけです。その後もビデオカメラを持って、アフリカや中東、アジアの様々な国で映像を撮り続けています。先日はNHKで放送されたソマリアのテロ取材を行いましたし、過去には「NEWS ZERO」で放送されたソマリアの海賊取材にも携わりました。約45年で180回以上渡航しています。
こういった話をすると、大抵の人は「よくそんな危ないところに行って無事だったね」と驚きます。たしかに、ソマリアは「通常戦争」の状態なので、銃撃戦が起きたり、1~2週間に一度は自爆テロによって死傷者が出たりします。安全ではない。ですが、危険な場所で取材をする場合、第一に考えなくてはならないのがセキュリティです。危ない場所に行くなら、必ず無事で帰ってこなければならない。拘束されたりするなどもってのほか。家族や政府に対する迷惑が計り知れないからです。
フリージャーナリストの後藤健二さんが殺害されてから、アフリカでも危険とされる地域にはなかなか日本のメディアが入れなくなりました。そのため、完全に自己責任・取材費も自己負担で取材を行い、日本に帰ってきてからテレビ局に映像を買ってもらう状態です。テレビ局が私を取材に行かせた場合、万が一のときに責任が取れないからです。しかし、今ソマリアで何が起きているのかを伝える必要があると感じています。