日本人のホスピタリティ精神を発揮しやすい分野が狙い目

『面と向かっては聞きにくいイスラム教徒への99の大疑問』佐々木良昭著 プレジデント社刊

トルコはいま、周辺70カ国とのビザ無し交流を続けていて、これらの国々で比較的自由にビジネスを展開できるという強みがある。実際、アラブ諸国や中央アジア諸国を訪れると、小規模店舗から大規模なスーパーに至るまで、トルコ人の経営する店舗が目に付く。

現在はエジプトやシリアとの関係がこじれてはいるものの、そこは何といっても旧オスマン帝国の末裔の国家である。トルコ人のもつ国際的人脈の多様さには、あたりを睥睨するものがある。

ということは、ビジネスパートナーとして見た場合、トルコ人は非常に頼もしい存在だということになる。

トルコは若年層人口の比率が非常に高く、人口約7500万人のうち29歳未満の若年層が約半分を占めている。とくに若い親たちは総じて子供の教育に熱心だ。なにせこの国も日本と同じ学歴社会であり、良い大学を卒業した者は、一流企業に就職する機会に恵まれるのである。

そこに着目した日本の教育関連の会社がイスタンブールに進出した。日本の教育のノウハウを武器にした学習塾をスタートさせ、手ごたえを得ているようだ。やがてトルコ国内にチェーン展開するはずだが、この会社が見据えているのはその先である。

この会社にとってのトルコという存在は、アラブ諸国や中央アジア諸国に進出するための橋頭堡なのだ。つまり、まずはトルコに進出し、トルコ人のビジネスマンや会社をパートナーに取り込む。そして、彼らの国際的ネットワークを活用しようという作戦なのである。

病院の運営をはじめとした医療ビジネスも可能性が高いと思う。

中東諸国全般に言えることだが、医師や看護師の質、とくにそのホスピタリティに問題を抱えている病院が多い。医師や看護師というのは選ばれた存在であり、端的に言えばふんぞり返っている者が多いのだ。

そんな中にあって、トルコの病院は医療技術が高く、院内も清潔で、なにより患者に対するホスピタリティの豊かさが評価を受けている。

同じ中東地域でも、経済的に余裕のある層は、わざわざトルコに治療を受けにいく。中にはヨーロッパから足を運ぶ患者もいるようだ。

そんな背景のある国だから、日本の医療機関が進出した場合、雇用するスタッフには困らない。あるいは現地の病院とタッグを組み、日本から医師や看護師を派遣して、日本特有の「痒いところに手が届くような」サービスを提供することも可能だ。

トルコで成功を収めれば、前述の教育関連産業と同様に、この国を足場として他の中東諸国に枝葉を広げていくことも可能だろう。