学校では「懲戒」が認められている
2017年の後輩力士への暴力事件で元横綱・日馬富士が引退したが、18年も日大アメフト部の悪質タックル指示、体操の宮川紗江選手へのコーチの暴力など、スポーツ界の不祥事が相次いでいる。原因の1つとして考えられるのが、日本のスポーツが学校教育の部活動と結びついていることだ。
じつは学校の校長や教員は、教育上の必要があると認められる場合、児童や生徒に懲戒を加えることが認められている(学校教育法第11条)。東京都「体罰の定義・体罰関連行為のガイドライン」によると、「腕をつかんで連れて行く」「頭(顔・肩)を押さえる」「体をつかんで軽く揺する」「短時間正座させて説諭する」といった行為は懲戒の範囲内だ。
これらを超える行為は許されないが、「軽く」や「短時間」は程度問題で、基準がはっきりしない。懲戒権が拡大解釈され、なかば確信犯的に体罰が加えられてしまう。
指導の現場で懲戒権が認められているのは学校の校長と教員だけだ。スポーツ関連案件を多く手掛ける合田雄治郎弁護士は、こう解説する。
「町のスポーツクラブの指導者に懲戒権は認められていません。部活動なら懲戒の範囲に入るとされる行為でも、学校教育外では不適切な許されない行為となる可能性があります」
ところが、スポーツクラブの指導者は部活動出身者が多く、学校教育外にも部活動の手法を持ち込みがち。結果としてスポーツ界全体に体罰が広がってしまった。
「学校教育の現場で懲戒が必要であることはある程度理解します。しかし、校外のスポーツ指導は教育ではないのだから、指導者が教え子を懲らしめるのは筋違いでしょう」