未成年者による体罰への「同意」
体罰については難しい問題がもう1つある。体操女子の宮川選手はコーチから暴力的な指導を受けていたが、本人はそれを受け入れて、告発はしなかった。本人の同意があっても、やはり体罰を伴う指導はいけないのだろうか。
暴力は刑法上の暴行罪で、暴行して相手にケガを負わせたら傷害罪だ。ただ、被害者本人の同意がある「同意傷害」については学説が分かれており、違法ではないとする説も根強い。
問題は、宮川選手のように被害者が未成年のケースだ。判断能力が未熟な未成年の同意を、どこまで本当の同意として扱っていいのか。合田弁護士は「未成年の自己決定権も重視すべき」と前置きしつつ、次のように話してくれた。
「一般論として、暴力を受けた瞬間に被害者が同意しているとは思えません。のちに競技でいい成績を残すようになって、自分を納得させるために言っているだけでしょう。また、周りや社会に与える悪影響を考えても、同意があるからといって暴力を認めることは相当ではありません。関係各所が後見的に介入する必要があるのではないでしょうか」
(答えていただいた人=弁護士 合田雄治郎 写真=時事通信フォト、iStock.com)